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天は音を聞き、覇王は軍を起こす

音々音を配下に向かい入れた北郷はその後、音々音の情報を元に現在中原にいる黄巾党の軍勢の状況を確かめていた。


「現在警戒しなくてはならないのが小沛にいる張梁、濮陽にいる周倉の二人だな」と机上の地図に駒を並べてある図面を見ながら、北郷は腕を組んだ。


「そうですな。ですが、張梁の方は現在気にしない方が良いかと」


「どうしてだ?」


「小沛の東、下邳には孫堅がいるのです」


「江東の虎か・・・(生きているのか!)」


「あの化け物ですか?」と心音(廖化)が青ざめながら話した。


「化け物?」


「寿春に救援に向かったことがあるのですが、その時にたった一人で二万もいた寿春を陥落させたのです」


「ーーー本当なのか?」


「はいなのです。実際は闇夜に紛れて場内に侵入し同士討ちを狙った物でしたが」


「ということは、猛将でありながら軍略に長けていると」


「そういうことになりますな」


(雪蓮に軍略の才能があるってところか・・・そりゃ化け物だな)


「だからこそ、張梁自ら兵を率いて防備を固めていると・・・そりゃ兵数も多くなるわけだ」


「そして水香ならば知り合いですので、投降の可能性もあるかと」


「周倉のことか?」


「はい。彼女も漢王朝に不満があって立ち上がった者ですから」


「なら、布陣を考えると今回は連れていくのは・・・」


翌日、王座の間にすべての将が集められた。


「次は濮陽を攻める」と北郷の発言があると回りがざわつき始めた。


「攻めると言ってもそう簡単に短期間でやるものではないと思うが?」


「普段であれば夏侯淵殿の言う通りでしょう。ですが、前回のように戦いを仕掛けられると言うのはどうしても後手に回りやすく、また準備もできません。ましてや濮陽は陳留に近く、賊に占拠されているということはそれだけなにか起きたときに連携されかねません」


「でもそれを言うなら小沛もそうじゃねぇか?」


「小沛の東には孫堅がいます。ですから賊も迂闊には動けないでしょう。そして、濮陽には心音の知り合いがいます。投降の可能性もあるということを踏まえ濮陽を落とします」


「なら決まりね。それで、いつ攻めるのかしら?」


「直ぐに・・・と言いたいのだが、戦後処理に張梁と孫堅の動向を探らせているのでそれが終わり次第と言うところかな」


「そうね、それで布陣は?」


「今回は攻城戦になる。だから弓兵はすべて持っていく。それを夏侯淵殿に率いてもらいたい」


「承ろう」


「次に歩兵だが、前回の賊をすべて持っていく」


「統率がとれてないのに?」


「統率がとれていないからこそ使い方によっては化けるんだよ。これを心音が率いてくれ。そしてその補佐にねね、君がついてくれ」


「承知しましたわ」


「はいなのです!」


「そして、騎兵を夏侯惇殿に」


「わかった」


「兄さん、あたいは?」


「曹洪殿と曹仁殿は今回は連れていけません。小沛が攻めてこないとは限らないのでね」


「そうですね」


「ちぇっ・・・つまんねぇの」


「文句を言わない。軍儀に私情を挟むのは愚か者がすることですよ?」


「解ってるよ。相変わらず固いな冬姉(とうねえ)は」


「では、次にそれぞれにこの袋を」と取り出したのは小さな巾着が人数分取り出された。


「曹仁殿、曹洪殿は敵が攻めてきた場合この袋を開けてください。ただし敵が来たらですから今は開けないように」と開けそうになっていた曹洪を止めた。


「次に、夏侯淵殿には、戦の戦局を左右する時に開けてください」


「わかった」


「次に夏侯惇殿、心音には先行してもらうので策を授けます。その策が完了したら開けてください」


「畏まりましたわ」


「解ったぞ」


「そして、華琳とねねには戦が始まってから開けてくれ」


「解ったわ」


「承知しましたぞ!」


「では、此度の私からの伝達は以上です。質問がある方がいれば受け付けますが?」と全員を見たが誰一人として声を上げはしなかった。


「皆無いようね。では、此度の会議は以上よ」と華琳が告げると皆立ち上がった。


「北郷」と退出しようとした北郷に夏侯淵が引き止めた。


「なんでしょうか?」


「お前に私の真名を受け取ってもらおうと思ってな」


「宜しいのですか?」


「主君が預けているのに部下が預けないというのもおかしな話だし、なによりお前の実力は称賛に値する。それと話すのも普通に話してくれて構わん」


「解ったよ」


「真名は秋蘭だ。これからもよろしく頼むぞ」


「そう言うことならあたいも預けるよ。真名は夏蘭、よろしくな兄ちゃん」


「では、私も。真名を冬蘭です」


「よろしくな、秋蘭、夏蘭、冬蘭。俺には真名がないから好きによんでくれ」と三人と握手すると、夏侯惇が近づいてきた。


「春蘭だ」


「ーーーよろしくな、春蘭」


「よろしくしてやろう」と夏侯惇と握手をするとその場にいた全員が笑った。


「なっ!何がおかしいんだ!」


「いやなに、姉者はかわいいなと思ってな」


「そ、そうか・・・ならいいか」


「ダハハハ、相変わらずだな春蘭」


「か、夏蘭!やはり貴様は一度叩き斬ってやる!」


「出来るもんならやってみろ、猪」


「貴様!待て!」


「待てと言われて待つ馬鹿はいねぇんだよ」と夏蘭は一目散に逃げ出した。


その光景を見て微笑む秋蘭と頭を悩ませる冬蘭であった。


その数日後、伝令がやって来た。


「孫堅が戦の準備か・・・」


「はい、さらにそれを見越してか小沛の一部が出陣いたしました」


「狩り時ね」


「あぁ、先行させた部隊もそろそろ着く頃だろうしな」


「全将兵に伝達!これより濮陽攻略の軍を起こす!」


「はっ!」

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