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天は新たな試練を与えられ、奸雄は天に微笑む

「御遣い?なんの事を言っているのかしら」


「天より舞い降りし閃光の輝きが大地を照らすとき、一人の人間が現れる。その者この世にはない輝きを持つ服を纏い、乱を収め栄華をもたらすであろうとワシの占いに出たのです。そこのあなた様がこれに当てはまるとワシは思うのですが、違われましたかな?」

 

 老人が北郷をまるで拝んでいるかのように腰を低くしながら尋ねた。

 

「その話は俺から言うことは何もない」


 北郷は自分が天の御使いとして何度も乱を治めている。

 だがこの時代、天と言えば帝。

 天の御使いだと自ら言ってしまえば、帝と対等かもしくは帝よりも位は上だと言っているようなものである。

 まして洛陽から遠くない陳留の地。

 宦官の目が光っているのは当然のことである。


 そして北郷は目の前の老人をじっと見た。

 外見は当然どこにでもいる普通の老人だ。

 だが、問題はそこではなかった。


 天の御使いと言えば、それだけでこの世界では一目置かれてしまうほど世に知れ渡っているはずの名だった。

 だが、反応から察するに曹操は天の御使いの事を知らないようだ。


 ならば答えは一つ。


 まだ世に知れ渡っていないということだ。

 それならば目の前の人物が占いで出たというのだから、思い浮かぶ人物は一人しかいない。

  

「ご老人、もしや貴方の名は、管輅ではないか?」


 そう北郷が言うと老人は飛び起きるように驚いた。


「なんと!ワシの名を知っておられるか!・・・むむむ!もしやそなた降り立つのは一度目ではないな?」


 そういわれて北郷は焦った。


「!!まさか貴方は管理者か!?」


 北郷の言葉に、老人は答えようと口を開いた。

 だが、それを遮るように一本の腕が老人の胸から突き出た。


「―――勝手にしゃべられると困るんだよ、ジジイ」


 開いた口からは吐血し、体は血飛沫を上げた。

 

「なっ!」

「貴様!」


 曹操は突然の出来事に唖然し、心音(廖化)は剣を引き抜いた。

 だが北郷だけはその男を知るかのように現れた人物を睨み付け、出会いたくはなかったかのように相手の名前を吐き捨てた。


「―――左慈!」


 左慈と呼ばれた男は老人の体から腕を引き抜き、何事もなかったかのように北郷を見た。


「―――久しぶりと言えばいいか?北郷一刀」


 そのやり取りに驚いた心音は、北郷に尋ねた。


「お知り合いですか?」


「あぁ、だが友じゃなく敵としてだけどね」


 その時、倒れていた管輅の手が北郷の腕を掴んだ。


「―――御遣い・・・殿。ハァハァ―――乱収まりし時・・ゲフ・・・都に行きなされ」


「分かった。もう喋るな」


「―――必ずや―――栄華を!!」


 そう言い残し、管輅はその場で果てた。


「やっとくたばったか」


 まるでゴミを扱うかのように吐き捨てた言葉に反応したのは北郷の後ろにいた二人だった。


「一刀様ーーー殺ってもよろしいですわね?」


「貴方が拒否をしても、私は見過ごすことは出来ないわよ」


 曹操は腰に下げた剣を引き抜いた。


「もちろん、俺も許すつもりはない!」


 拳に力を込め、構えた。


「ハッ!俺とやる気か?いいだろう」

  



「はぁぁ!!」と心音(廖化)の右の剣が振り落とされたが


「遅ぇ!」と左慈は左裏拳で剣を捌いた。


「まだまだですわ」と心音の左の剣が振り上げられたがそれすら左慈は右足で上がりきる前に止めていた。


そしてそのまま前蹴りで心音を吹き飛ばした。


だが、それを曹操が見続けているはずもなく、左慈の真横から仕掛けようとした。


だが、左慈は嘲笑うかのように、曹操に向かい回し蹴りが叩き込んだ。


とっさに剣で受け止めたため、その勢いのまま家屋に突っ込んだ。


その時だった


「「華琳様!!」」と二人の女性が走ってきた。


「ーーーいいところに来たな、春蘭、秋蘭」

と北郷はニヤリと笑った。


「ちっ!面倒なのが来やがったな」と苛立つ左慈の隙を北郷は見逃さずに踏み込んだ。


それの対処に左慈が遅れるはずもなく、繰り出された右ストレートをしゃがみながらかわした。


「まだまだ甘いな、北郷一刀」と笑った左慈だったが


「お前がな!」とそこへ左足の蹴りを繰り出した。


「ちっ!」と両腕でガードした左慈はそのまま、曹操とは反対側の家屋へ吹き飛ばされた。


「ご無事ですか!?」と青髪の女性が曹操の体を支えた。


「えぇ」と曹操は埃を払いながら起き上がった。


「貴様ら!!華琳様の土地での暴挙!この夏侯元譲が許さん!」といきなり北郷を切りつけてきた。


「うわぁ!ーーー危ないだろう、夏侯惇!」と間一髪で避けた。


「当たり前だ!貴様を殺すつもりだったからな。むしろよく避けたと誉めてやろう」と威張る夏侯惇に対し北郷は呆れながら


「あんたの相手は俺じゃないし、騒ぎを起こしたのも俺じゃないよ」


「知らん!騒ぎを起こしたのは男と聞いている。ならここには二人しかおらんのだから両方叩き斬ればいいだけだ!」と胸を張る夏侯惇だったが


「やめなさい春蘭!その男は斬ってはダメよ」


「華琳様!?・・・成る程、捕らえろということですか。お任せください!足の一本でも斬って捕らえて見せましょう!」


その言葉を聞いた曹操はため息をつき


「だから、斬ってはダメと言ったはずよ?その男は我が軍の客将。騒ぎを起こしたのは、家屋にいる方よ」と左慈を指差した。


「貴様か!」と夏侯惇は出てきた左慈を睨み付けた。


「相変わらずの馬鹿だな。・・・だが、馬鹿だけならまだしも妙才までいるんじゃ、少し分が悪いか」


「誰が馬鹿だ!」とおもいっきり左慈めがけ飛び、まるでハンマーを叩きおろすかのように、剣を振り落とした。


凄まじい轟音と共に、見事に真っ二つに割れた人影は、不気味な笑みを浮かべながら崩れ落ちた。


「姉者、後だ!」と青髪の女性は弓を手に取り、夏侯惇の後ろに矢を放った。


その矢は、夏侯惇を狙っていた左慈の腕を掠めた。


後退する左慈だったが、そこへすぐさま夏侯惇が横一線に斬撃を加えると左慈はおもいっきり吹き飛ばされた。


「ーーーっ!相変わらずの馬鹿力だな。流石に気だけでは押さえきれないか」と左慈の両腕でからは血が流れ始めていた。


その時だった。


〈左慈、目的は果たしたいるはずですよ?〉と何処からか声が響きわたった。


「その声は、于吉か!?」と北郷が尋ねると


〈お久しぶりですね、北郷一刀。ですが、今は貴方に用はありません。左慈、すぐに戻って来てください〉


「ちっ!ーーー分かった」


「私が逃がすと思っているの?」と曹操が問いかけたが


〈えぇ、ですから少しの間彼らの相手をしてもらいますよ〉


その声と共に、左慈の回りの地面から全身を白いローブで包まれた人が、次々と現れた。


「なんだこいつらは!」


「夏侯惇、そいつらは傀儡だ。人じゃないが練度は、自分たちの兵と思え!それから、心音!剣を一本貸せ。相手は君と同格だ。必ず防御に徹し、隙あらば攻撃に転じろ。そして夏侯淵、君は曹操を守りつつ弓で援護を頼む」


「心得ましたわ!」


「何で貴様の言う事を!「春蘭!北郷の言ったことを聞きなさい!」華琳様!?ーーーわかりました」


「華琳様、あの者何者ですか?」


「さぁ?私にもわからないわ」


「その割りには久しぶりに楽しんでおられるようですね」


「あら、わかる?ーーー見つけたかもしれないわね、眠れる龍を」と曹操は楽しげに北郷を見つめた。


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