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影は天を救い、水は刃を唸らす

明朝、4人の武将が広宗城の前に現れた。


「聞け!我らは廖化、周倉、劉辟、龔都だ。わが主君、北郷一刀は皆の受け入れを許可してくれた!今からでも遅くはない!降伏したいものは城門を開けよ!」と心音(廖化)は黄巾党に宣言した。


すると城壁の上から一人の男が進み出てきた。


「確かにその顔は、周倉だな。だが、朝廷に媚び売った野郎に用はねぇ」


「なんだ、厳政じゃねえか。悪いことは言わねぇ、降れよ」


「阿保か!誰がてめえなんかに降るか!そこで待ってろ、その首叩き落としてやる!」と城壁から消えた厳政は獲物を担ぐと城門から飛び出してきた。


「水香、わかってますわよね?」と隣にいた廖化が周倉に尋ねた。


「わかってるよ。これでもこの前まで一軍引いてたんだからな、まぁ見てろって」と周倉は駆け出した。


「ずいぶんひでぇ顔じゃねぇか厳政?」と真っ赤な顔をした厳政を見た水香(周倉)は不敵に笑った。


「誰のせいだと思ってやがる!貴様もせいぜい犬っころだったってことかよ!」


「朝廷の犬ってか?そりゃお門違いだね。私が従ってるのは漢じゃなく天なんだよ。そこんところ履違えてもらっちゃ困る」


「どっちだって変らねえ!お前がどうしようもない奴だって事はな!」


「へっそりゃお互い様だ!」と両者の刃が振り落とされ、甲高い金属音が鳴り響いた。


それから両者は一歩も譲らず、お互いに刃を交えていた。


これに業を煮やしたのは他でもない、黄巾軍の方であった。


一騎打ちは武人の花、されども彼らは武人ではなく農民や盗賊。


名誉や秩序よりも、目の前の金を拾った方が何倍もましだと思っている連中の集まりである。


ましてや城内の兵数は、圧倒的に多いのだ。


城兵が突撃してくるのは時間の問題であった。


「来ましたわね」


「あたしらがあっち側にいたら同じ事をしてたからね、まぁ当然といえば当然か」


「水香!」


「せっかく面白そうになってきたところだったんだがな、まぁいい。じゃあな厳政」


「誰が逃がすか!」


「別に逃がしてくれなんて言わねぇよ」と水香は一瞬にして厳政の槍を弾き飛ばした。


その槍はそのまま厳政のはるか後方へと吹き飛ばされ、地面へと投げ出された。


「何のつもりだ」と自らの首筋に刃物を充てられた厳政は、水香を睨み付けた。


「だから言ったろ?逃がしてくれなんて言わねぇって」と笑った。


「殺せ!」


「よせよ、こんなところでお前は犬死する必要はねぇ、とっとと帰んな」と水香はその矛先を厳政から外すと、振り返り心音たちとともに連合軍陣へと撤退していった。


そこからはまさに混戦状態に陥ったが、連合軍曹操、孫堅軍の猛攻に一瞬ひるんだ黄巾軍は城内へと撤退し籠城を始め、両者膠着状態のまま初戦は終結した。


「さて、まずは第一段階完了ってところかな?」と陣営に帰ってきた北郷は隣にいた音々音を見つめると笑った。


「こちらの被害も負傷兵はいるものの死者の数はそれほどまででもないのです」


「あとはうまくやってくれるといいんだけどな」


「大丈夫でしょう、そのための策です!」


翌日、連合軍は城壁の矢が届かない位置に軍を集結させ、様子を見ていた。


「そろそろ動きがあるはずだ」と北郷が城門を見ていると、城壁の上から旗が揚がった。


「どうやらうまくいったようなのです」


「あぁ、これで落ちたも同然だ、全軍に総攻撃の指令を」と北郷は各諸侯に総攻撃の指示を飛ばした。


一方そのころ、この状況を楽しそうに見ていたものたちがいた。


「やっぱ、冥琳の言ったとおりだったな。こりゃ見ておいて正解だったよ」


「本当よね、でもなんで天の御使いが相当な切れ者って知っていたわけ?」


「それは内緒だよ。雪蓮に言ってもわからんさ」


「ぶーぶー。なによそれー!なんか妬けちゃうな」


「妬いてくれるのか?」


「あたりまえじゃない。冥琳は私の物でしょ」


「はいはい、馬鹿言ってないでそろそろ北郷から指示が来るはずだ」とそんなことを言っていると、曹操軍からの使者が来ていた。


「策は成功!全軍総攻撃をとの軍師殿からの命です」


「了解した、炎蓮様!」


「うっしゃ!テメエら!孫家の牙で奴らの命を食い散らしてやれ!全軍突撃だー!!!」


「おおー!」


そして黄巾党にもある変化が訪れていた。


城門から旗が振られる少し前、地下牢である出来事が起きていた。


「貴女は?」と眼鏡をかけた少女が目の前にいるフードをかぶった少女尋ねた。


「曹操軍客将、徐庶元直。あなた方をお迎えに参りました」


「ちーたちがだれか知ってるってわけ?」


「はい、張三姉妹と…」


「どこでそれを?」


「曹操軍にいる天の御使い、北郷一刀殿があなた方三人が少女であると、そして利用され捕まっているはずだと…」


「北郷さんはどこまで知っているのかな?」


「おそらくすべてかと…出来ればお供していただけると助かるのですが?」


「―――わかりました」と長髪の少女が立ち上がると前へ進み出た。


「姉さん!」


「大丈夫、彼ならきっと助けてくれるよ」と姉と呼ばれた少女はにっこりと笑った。


「だって一刀だもん」

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