群雄は集結し、天は音と影を操り心を見る
陳留城防衛戦から約2週間後、広宗で官軍8万が黄巾軍12万と対峙していた。
「では、軍議を始める!」
大将軍、何進の号令とともに諸侯の面々が頭を下げた。
その場には何進を筆頭に、櫨植、皇甫嵩、朱儁、王允、董卓、陶謙、袁紹、袁術、孫堅、曹操がいた。
各諸侯の今迄の情勢を見ると、櫨植は何進の軍師として従軍。
皇甫嵩はここ冀州の黄巾党討伐をするが数に押されあまり戦果が出ず、朱儁は袁術とともに宛城周辺の黄巾党を殲滅した。
また王允は洛陽守備、陶謙は涼州にいたが、黄巾党勃発により徐州刺史となり孫堅軍と協力し下邳城を占拠しその守備に就いた。
董卓は劉備軍援軍の助勢を得ると涼州一帯の黄巾軍を殲滅、劉備はそのまま涼州へ残り代わりに董卓が冀州へと赴いた。
そして問題は袁紹であった。
袁紹は濮陽の県令をしていたが、黄巾の乱が起こるよりも前に民の蜂起により失脚その後曹操が引き継ぎ、袁紹は広宗の県令についていた。
本来であればここの拠点が黄巾賊にとられることはまずなかった。
それは袁紹軍は軍としては惰弱であっても、賊に後れを取るほど弱いわけでもなく、当時は5万ほどの兵がいたのだ。
だが、黄巾の乱勃発後、袁紹が洛陽に招集された際、兵4万と主だった将を全員連れて向かってしまったため、その情報をかぎつけた黄巾軍は全軍をあげて占拠に成功、袁紹はその時洛陽にいた袁隗に一族を滅ぼすつもりかとひどく叱責され、名誉挽回の機会と何進の副官を務めていた。
ちなみに、袁紹が曹操のことを気に入らないのが濮陽の県令を自分よりもうまくやっていることであったのはまた別の話である。
「まずは、軍師を任命したいのだが…諸侯の推薦は如何なものか?」
すると一人立ち上がった
「ふむ、本初か…」
「僭越ながら軍師の兼お引き受けしたく…」
「普通の軍ではそなたでも可能であろうが、あいにく此度は諸侯を率いなくてはならん。そなたは少々、世間の知識に疎い。ゆえに官軍ではない者たちまでも率いることはできんだろう」
「そんなことは!」と引き下がらない袁紹だが、そのすぐ隣にいた華琳が
「諦めなさい麗羽。貴女では役不足よ」
「なっ!あなたのような、ちんちくりんに言われる筋合いはありませんわ!」と怒った袁紹だったが
「これ、やめんか!」と何進に一括されると渋々席に座った。
「それで、そういうからには推薦したい相手がいるのよね、曹操殿?」と声を上げたのは孫堅であった。
「そうなのか?曹操」
「はい…我が軍に今、天の御使いがおります。その者知略に長けているゆえ軍師としては如何かと」
その瞬間、天幕内がざわついた。
それもそのはずだろう。
大将軍の軍師となるからには、それ相応の責任を問う。
それまでの経歴や朝廷への関与などがない北郷一刀など平民と変わりはしないのだ。
才があったとしても、平民を使うなど朝廷を罵倒しているようなものなのだ。
その習慣こそが大陸を衰退させる一つではあるのだが、そのことに気付いているものは少ない。
だが、歴史は一つの起点になろうとしていた。
「なるほど。曹操殿が言うからにはそれ相応の覚悟があるのだな?」
「もしその者、軍師足り得なければ、この首を落とされても構いませぬ」
「しかし…」とほかの諸将がまたもざわつく中一人机に乗り出した。
「なら、他に良い意見があるものはいるのか!?」と江東の虎が闘牙剥き出しで声を上げると諸将は黙ってしまった。
だが、それでは脅したに過ぎないため、何進の軍師たる盧植が
「では、実際に策を練らせ、皆様で検討するのは如何かと。それならば皆様も納得なされるのでは?」
「なるほど、試してから用いるということか・・・よろしいかな曹操殿?」
「構いません」
「では、どれほど時が必要かな?」と盧植が尋ねると
「今その者軍に居らぬため、2刻ばかりあれば」
「おらぬだと?」
「はい、すでに敵の視察に行かせてあるため我が本陣にはおりません。兵は神速を貴ぶもの、軍師とて我が軍では同じことですから」と華琳はにやりと笑った。
その頃同時刻にて、広宗城を見ていた4人の人影があった。
その影は北郷、音々音、影里(徐庶)、心音(廖化)であった。
「どう見るねね?」
「一見、多方から攻めやすい地形に見えますが、袁紹軍最重要拠点としていただけあり城壁の高さは軍備品にある梯子では届かないのです。よって今から作るとしたらそれ相応に時間がかかるため多方から攻めるというのは無理なのです」
「半分正解かな。影里はどう見る?」
「ねね殿の言に足すとすれば、袁紹軍の拠点であるため兵糧は十分。半年は楽にもつでしょう。それに比べ我が連合軍は2か月ほどの備蓄しかありません。まさに短期決戦が必要とする中、相手にはかなり有利な展開といえます」
「していかに攻める?」
「黄巾軍が攻め込んだ東側の城壁がもろくなっています。そこを袁紹軍が持ってきている衝車を使うのがよいかと」
「だが、被害が拡大するな…」
「では、前回使った兵をもぐりこませるのは如何ですか?」
「いや、一度使った策は策士ならば通用するが、賊には通じない。現に程遠志の残党は皆殺しにされたそうだよ。禍根を残さないためにね」
「なんという…」
「では、如何にして攻めますか?」
「まずは・・・」と北郷はひそかに三人に策を告げるのだった。




