花が咲き誇る、その様を見た智者は二振りの獲物を現す
「くそが!!」と管亥は机を叩きつけた。
それもそうだろう。
場内を守るのは1万の兵と聞いていた。
しかも、場内の兵に弓兵はいないということまで確証を得ていたのだ。
だからこそ1万でも問題はなかったはずなのだ。
なのに結果は大敗。
死者数で言えば1300程であったが、問題は残った兵士であった。
一度植えつけられた恐怖というのは並大抵のものでは打ち破ることはできない。
「これで分かったでしょう?だからこそ反対だったのよ。だけどあなたはそれを押し切って打って出た。この責任をどうとるつもり?」
「うるせえ!!次に勝てばいいだけの話だ」
その言葉を聞いた張梁は盛大にため息をついた。
「そう、なら勝手にすればいいわ。私は降ろさせてもらうわよ」
「勝手にしろ!!」
「そうさせてもらうわ」と張梁が天幕を出ようとした瞬間、兵が駆け込んできた。
「報告!!敵城壁からまたもや赤旗を確認。それと同時に城門から数騎出陣しました」
「出陣!?(士気が上がった敵は、このまま耐えれば援軍到着まで耐えることができるはず。それを何故、敵はあえて出てきたのか…まさか!?)」
「赤旗が振られてるんだ、警戒しつつ数名付けておけ」
「ダメよ!!すぐに全軍でその兵をすべて確保して!」
「何言ってる!さっき旗振られて、やられたばかりだろう。ここはもう一度、慎重になるべきだ!!」
「そっちこそ抛けているの?敵の狙いはそれよ。そして数騎ということは伝令兵よ。ちなみにそれはどっちに向かってる?」
「それが…こちらに向かってきます」
「伝令なら敵中突破なんかしないだろう。まして東には曹操軍の援軍なんていない。やっぱり罠だろう?」
「違う、援軍なんかじゃない。敵の狙いは下邳…江東の虎、孫堅軍よ!!」
「なんだと!!それじゃあ敵の狙いは…」
「そう、陳留に私たちを引きつけて小沛を孫堅軍に落とさせるつもりよ。だからこそ、必ず止めなきゃだめ」
「畜生が!!全軍に通達、東に向かおうとする奴は誰であろうと斬れ!!」
「わかりました!!」と伝令は急いで陣内を駆けづり回った。
(これはもうだめね。気を見てそのまま冀州に行った方がよさそうだわ)と張梁は天幕を後にした。
「やはり敵の対応が遅ぇ…こりゃ行けるな!」と夏蘭(曹洪)は敵の陣に突撃を開始していた。
「油断するなよ若造が、敵を突破してから安心するもんじゃ」とその後ろには老婆がしがみついていた。
「わかってるよ戯志才の婆さん」
「せっかく桂花が開いた道じゃ。それを繋げるのはお前さんの役目じゃろうて」
「へっ!期待に応えなきゃ、曹家の名が廃るってもんだ!舌噛まねえように気をつけな!」
まさに疾風怒濤の勢いで迫る夏蘭の前に立ち塞がる敵はいなかった。
荀彧の狙いはまさしくこれにあった。
敵に恐怖を与え、動きを鈍らせ、より有利な展開を築きあげる。
そして狙いを定め勝利への道を切り開く。
その一手が打たれた。
だからこそ、夏蘭は止まることはない。
ただ一つ誤算であったのが、敵に一騎当千の猛者がいる事であった。
「曹魏の兵よ!悪いが止まって貰おう!」
「良い覇気だな、だが遠慮しとく。此方は急ぎの用なんでな」と夏蘭が突っ切ろうと馬速を上げた。
だが、その者は地面に向かい獲物を振り落とすと、轟音と共に石つぶてがとんだ。
馬には当たりはしなかったものの、馬が嘶き完全に動きが止まった。
「ちっ!」と夏蘭は剣を抜いた。
だが、その者は武器を下ろすと
「待て、聞きたいことがあるだけだ」と主張した。
「はぁ?」と夏蘭が疑問を思うのをよそに、その者は話を続けた。
「曹操の元に天の御遣いがいるとは真か?」
「ーーーいるぜ」
「その者の名は北郷か?」
「そうだ。だからどうした?」
「そうか」とそいつは急に笑った。
その時、配下を従えた管亥がその場に駆けつけた。
「よくやった!」
だが、管亥がやって来てもその者は笑うことをやめなかった。
まるでそんなことは些細なことであるかのように。
「やっと、やっと見つけた。わざわざ暇を貰って来た甲斐があった!」とその場で身長ほどある金棒のようなものを振り回した。
その矛先は、夏蘭ではなく管亥へと向けられた。
「何しやがる!」
「もう良いだろう?」
すると天幕から頭巾を被った人物と少女が姿を表した。
「はい、構いません」
「よっと、やっと暴れられるんだね」と少女は鉄球を担ぎ上げた。
「ただし、混乱させたら城に向かいますからね?」
「あぁ、わかっている」
「はーい」
「久しぶりの戦だ!さぁ、我を倒せるものはいるか!」
「村を襲われたお返し、たっぷりと味あわせてあげるよ!」




