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音は策を組み立て、心は水を動かし、玉を掴む

心音side


陳留から春蘭たちに追いかけられ、敗走兵として濮陽城に潜入を成功させた心音(廖化)と音々音は濮陽城の玉座の間にいた。


「開城ありがとうございます」と心音は目の前にいる男、程遠志に頭を下げた。


その男は玉座に座り、手をあげ


「よい、我々は同志だ。仲間を助けるのは当たり前ではないか」とまるでこの城の主のように振る舞っている、程遠志を心音は心底苛立っていた。


なぜなら、この城に来る途中にある大通りがまさに廃墟と化し、そこに住んでいるはずの民の死体が転がっていたからだ。


そして程遠志の隣にいる麦わら帽子を被った赤髪の女性が


「あんたが負けてくるなんて珍しいじゃないか?心音」と問うと


「水香(周倉)、相手は曹操軍です。いくら兵の利があろうと、奇策には対応できませんわ」


「奇策ねぇ~」


「なにか?」


「いいや、別に」


「よいではないか。我らが場外にいる曹操軍を蹴散らせばいい事だ」


「お待ちくだされ!」と心音の隣にいた音々音が声をあげた。


「その方、何者だ?」


「徐南で何儀殿の軍師を勤めていた陳公台です。曹操軍は我らの追撃した部隊を二手に分けているのです。おそらく伏兵。こちらから仕掛けるのは下策です。なにより兵数はこちらの方が上、ここは籠城が上策ですぞ!」


「成る程、では籠城するのが当然よな」カカカと笑う程遠志に周倉は


「本当にそれでいいんだね?」と疑問を投げ掛けた。


「ワシが決めたことよ。いちいちお前が口にすることではないわ!」


「ならいいさ」と退出しようとした周倉が心音の横を通りすぎるところで


「後で話があります」と心音が口を開いた。


「こりゃいい。あたしもあんたに聞きたいことがあるんだ。部屋にいるから終わったら来な」


「では」と心音が軽く会釈すると周倉は退出した。


それから黄巾党の各地の現状、これからの作戦を聞いた心音と音々音は周倉の部屋に入った。


「来たな、まぁ座れや」と空いている席に心音と音々音は座った。


「それで、どうして曹操軍なんかにいるんだい?」と周倉はニヤリと笑った。


「なっ!」と一瞬声をあげた音々音の後に心音は深いため息をはいた。


「ねねさん、それでは否定できませんわ」


「うっ・・・申し訳ないのです」


「なんで・・・とは言う必要はないですわね。どうせいつものはったりでしょう?」


「あはは、よくわかってるじゃないか。でもかけてみるもんだ。それで、理由は?」


「ーーー主を見つけましたの」


「曹操がか?」


「いいえ、曹操殿は確かにこの世を平定させる英雄でしょう。ですが、私が求める主ではなかった。私の主は天の御遣い、北郷一刀様ですわ」


「天の御遣い?あの噂話の」


「えぇ。水香、あなただったら人の上に立つべき者は誰だと思います?」


「そりゃ、帝だろ?じゃなきゃ誰だってんだよ」


「彼は人だと言いましたわ」


「人かーーー」


「そう、それもただの人ではなくその名に相応しい者がなるべきだと」


「確かに、今の帝がその座に相応しいとは思えねぇな。ーーーだが、誰かがすぐに変われるものじゃ無いだろう?」


「確かにそうですわね。でもそれで立ち止まっているよりは、動くべきだと私は思いますわ」


「確かに、今このまま賊としてやっていくのも限界はあるだろう。なら、動くときが来たって事だな!」


「では!」


「話に乗ってやるよ。元々程遠志の相手をするのもうんざりしてたところだ」


「では、ねね殿は効率のよい火計地点の模索を」


「承知なのです!」


「俺は何をすればいい?」


「一刀様から聞いた話だと、北の幽州から義勇軍の劉備が近づいて来ているはずなのですが」


「義勇軍・・・確かに来てるぜ。程遠志の野郎が負けたって言ってたのはそいつらの軍だからな」


「では、城下のあれは?」


「程遠志の野郎の憂さ晴らしさ。あたいは止めたんだが、やつの方が立場が上だからな。結局牢に叩き込まれたさ」


「よく無事でしたね」


「ここはついこの前まであたいが指揮してたんだぜ?部下の多くは程遠志のやり方を気に入ってねえのさ」


「成る程、ではこちらにつけることは?」


「奴等の身の保証はしてくれんだろ?」


「私の真名に誓って」


「なら、促してやるよ。ざっと五千人はいると思うからな」とケラケラ笑いながら部屋を後にした。


(次にこれですわね)と心音は懐から袋を取り出すとそれを開けた。


その中には小さな手紙がはいっていた。


[劉備軍が確認できたら義の字を、周倉の投降が完了したら完の字を書いた手紙を、俺が着陣したら城の回りに現れるから矢にくくりつけ放ってくれ。その後、華琳が着陣した翌朝に策を決行する。指示はねねに任せてあるからよろしく頼む]


読み終えた心音は立ち上がると手紙を近くにあった火で燃やすと立ち上がった。


その後、作戦は着々と進んでいった。


それは、程遠志が大胆な将であったからだ。


聞こえはいいかもしれないが、統治能力、指揮力が乏しく自分を曲げない頑固者。


どこをとっても敗戦の将にしか思えない彼だが、唯一誇っていれるのがその戦のやり方であった。


華琳が着陣した明朝


「敵布陣は?」と城壁の上から程遠志は曹操軍を見つめていた。


「正面に夏侯惇、その後に曹操。東の門を劉備軍、西の門に十文字の旗」と心音が答えると程遠志は腑に落ちないようで


「北には?」


「いません。あそこは一番強固の門ですからわざわざ攻めてくることはないかと」


「ーーー成る程。クカカカ、曹操もわりとたいしたことがないの。まずは、攻めるぞ」


「は?折角の籠城の利を捨てるのですか!?」


「奴は北に伏兵を配している。まずはそれを叩く」


「そんな情報ありませんが?」


「無いからこそいるのだ。曹操の戦は劉備のような個々の力量を活かした戦ではなく、圧倒的な情報線の上で一兵卒で勝利できるように策を組み立てることでなりたっている。だからこそこの布陣の漏れは明らかにおかしいのだ。だからこそなにもないという北の門に勝利の要がある」


程遠志が自らの地位を確立できたのはこの人物鑑定能力であった。


今までの戦の情報は必ず仕入れ、その戦の展開の仕方、癖などをつかみ、その者の戦の流れを読むことができる軍略家。


ただひとつ、慢心がなければ彼は後の世に名将として残せただろう。


だがこの時、心音は内心不味いと思っていた。


(策が看破される!ねねさん、早く!!)


まさにその時だった。


物凄い轟音と共にあちこちから煙が立ち上ぼり始めたのだ。


「何事だ!」と声を荒げると、一人の伝令兵が駆け出してきた。


「申し上げます!!いきなり食糧庫が大破しました!また周倉殿が謀反。それにつられ離反者が多数」


「周倉め!またワシに歯向かうか!」


「お待ちください!水香は私が。敵がこの気に攻める可能性があります。程遠志殿は離脱された方がよろしいかと」


「ーーーわかった。後は任せる。場外へ脱出する!」


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