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 陸話 夢の内容ってのは自分の何かを示すものらしい

さて、出発ですがその前に……

 ある日の放課後、校舎裏

 

 ほら! お前等、帰った帰った!


「邪魔しないでよ白零!」

「女みたいな顔してるくせに!」

「く! 白零! 覚えていろよ!」


 なにお決まりのセリフ吐いているんだ。っつか顔関係ないだろ。

 さて……


「…………!」


 大丈夫か? けがは……あるな。


「……白零君、だっけ?」


 ん、なんだ? 俺は白零だが?


「どうしてわたしを助けたの?」


 は? どうしてって、いじめられた子を見つけたら助けるもんだろ。


「で、でも。わたしを助けたせいで白零君までいじめられるんじゃ……」


 いいっていいって。俺の事は元からだし。


「でも……そんなの悪いし……わたしなんて……」


 ……大丈夫だ。お前は俺が護るからさ。


「……護る?」


 ああ。暴力から、お前を傷つけるものから、お前を護ってやる。


「……白零君。本当にいいの?」


 ああ、約束だ。お前を護る。


「……ありがとう。約束だね」






 ……夢か。

 はは、懐かしい夢を見たもんだな。あいつとの夢を見るとは……

 ……ん?


「……………!」


 突如目の前に気配を感じ、横に跳んだ。

 そして、目を開けて確認すると……


「零ちゃん。おはよう」

「……………」


 俺の突然の横跳びに驚いた様子じゃない千代だった。

 とりあえず俺は疑問に思ったことを口にする。


「千代、おはよう。そして何で俺の前に?」

「うーん。それはね」


 なんだ、なんだ?


「どうして零ちゃんは立ったまま寝られるの?」

「ああ……」


 そう言われても……


「用心棒だからだ」

「用心棒だからだね」


 何で納得するんだ。


「じゃあ零ちゃん。支度しましょ」

「ああ」


 こんな感じで朝は始まったのであった。






 幻界と呼ばれる不思議な所から次の日、私はいつもとは違う感じをしつつ目を覚ました。


「う……ん……」


 私は目を擦りつつ部屋の端の方を見ました。

 そこには零ちゃんが壁立て掛け寝で寝ていました。


「……………」


 零ちゃんはまだ眠っている様子でした。

 零ちゃんは寝る時もジャージのままです。

「なんで寝る時もジャージなの?」と聞いたら…


「目を覚ました時にすぐ動けるからだ! ジャージはどんな時でも対応できる最高の運動着なのだー!!」


 と、言ってました。私には解りません。

 零ちゃんはジャージに対する愛着が強いのです。

 私はそっと零ちゃんに近づいてみました。


「……………」


 何時見ても、とても綺麗な貌をしています。

 けど、表情が険しいです。安心せずに警戒しているという顔です。

 私はもう少しだけ近づいてみました。

 すると、


「……………!」


 突然零ちゃんは横へ跳んでいきました。

 私は内心、驚きました。


(そこまで警戒してたんだ……)


 零ちゃんは寝るときも気を緩めません。ここがいつもと違うところならなおさらです。


(私ももっとしっかりしないと……)


 とりあえず私は挨拶をしました。


「おはよう零ちゃん」 

「千代、おはよう。そして何で俺の前に?」


 あ、そうですね。それは顔が見たかったのですが……


「うーん。それはね」


 私は素朴な疑問をします。


「どうして零ちゃんは立ったまま寝られるの?」

「ああ……」


 私もやってみましたができませんから……


「用心棒だからだ」

「用心棒だからだね」


 やっぱり一人前の用心棒じゃないとできないんですね。


「じゃあ零ちゃん。支度しましょ」

「ああ」


 こうして一日は始まったのでした。







 支度を終えた俺達は風精族シルフィの里に向かうために小船に乗った。


「短い間だったが世話になったな」

「ふふふ。よいのじゃ。そなたも達者での」

「リュンピさん。ありがとうございました」

「ふふふ、帰れるといいな」

「ああ!」


 こうして俺達は水妖族オンディーヌの里を離れ大陸へと向かったのだった。








「……あの、リュンピ様」

「なんじゃ、レイラ」

「最近、その同盟の風精族シルフィからの連絡が来ないのですが、何かあったのでしょうか?」

「ふむ、そういえばそうじゃのう。何かあれば連絡は来るし、なくても定期的には問題ないって言うんじゃがのう……」

「リュンピ様」

「うむ、レイラ。一応準備はしときなよ」

「はい」



――――――――――――――一時間後――――――――――――――



「つ、疲れた………」

「だめだよ零ちゃん。手を止めたら小船が動かなくなるよ」

「そうは言っても……」


 零ちゃんったらオールを漕ぐのに疲れちゃって…

 私はまだまだ行けるのに……


「つーかなんで千代は平気なの?」

「そんなのいつも“あれ”を持ち歩いているのだからこのくらいは平気よ」

「お前って実は力持ち?」

「えっ? でも女は力では男には勝てないってお母様が言ってたわ」

「いや、普通の女はそんな重たい和服は着ない」

「つまり私は普通じゃないってことだね」


 だから力持ちなのね。


「そこは普通に納得するなよ……」

「うふふ……」


 でも、もう少しで陸なのです。だから…


「零ちゃん、頑張りましょ。そうすれば漕げるよね」

「どういう理屈だ。まあ、頑張るか」


 零ちゃんは再びオールを持って漕ぎます。

 私も頑張ってオールを漕ぎます。

 そして……



―――――――――――――三十分後――――――――――――――



 ようやく陸地に到着しました。

 止める橋がありましたが水妖族オンディーヌさんと風精族シルフィさんが同盟を組んでいたからでしょうか?

 陸地は砂浜でその後はそのまま森続きのようです。


「それじゃあ。行こうか」

「いや、待て」

「?」


 どうしたのでしょうか。

 零ちゃんが何だか険しい顔をしていますが……


「そこにいる奴ら、出てこい!」

「え……!?」

 

 そのとき、私は気づいたのです。

 目の前の森の中に誰かが隠れていたのを。

 出てきたのは……


「おいおい坊主。見かけによらず鋭いなあ。びっくりしちゃったぜ」

「は! 用心棒やっているんだ。向かう先を察知しないといけないからな」


 それは、腕が生えた大きな蛇男さんでした。

 しかも…


「へっへっへ! 人間がこんなところにいるたぁ“迷い子”かあ!」

「しかも子供だぜまだ。ひゃっひゃっひゃ! こりゃ高く売れるぜ!」

「ああ! しかも片方は女だしよぉ!」


 大人数はいました。


「零ちゃん。これって……!」

「ああ。リュンピさんが言ってた火蛇族サラマンドラのようだ」


 確か火蛇族サラマンドラは人間を嫌っていたのでしたね。


「大陸についてそうそうとは、俺達ついてないぜ」


 たしかにいきなりの遭遇です。

 と、いう事は、


「あの、一応お聞きしたいのですが私たちをどうするのでしょうか?」

「あぁ? なんだよ嬢ちゃん! 自分がどうなっていくのか怖いのか?」


 蛇男さんは蛇なのに顔をすごく歪ませて言います。

 この顔は……お母様が言ってた“男”の顔。

 私は男を知らなさすぎると言われていますが、それでも不快だという事がわかります。


「とにかく嬢ちゃんはさらって奴隷にでもさせてもらおう!」

「もう一人は綺麗だが残念なことに小僧だ! だから美味しく喰らってやるぜ!」

「嬢ちゃんの方は遊び相手には最適だな!」


 ぎゃはははと笑う蛇男さん達。

 私は決めました。


「零ちゃん。私……」

「ああ、緊急事態だ。闘っていい。だが……」

「わかっているよ。殺さない、だね」

「そうだ」


 私は我慢がなりません。

 お母様をめちゃくちゃにした男の顔が…!

 零ちゃんを食べちゃおうとするなんて、そんなこと…そんなこと……!


「させません……!」


 相手の数は……たくさん。

 私はお母様から授かった“あれ”を袖の中から取り出した。

突然の遭遇

黒千代が取り出したものは……

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