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 肆話 女×偉い人=緊張してついぶっきらぼうに……

さて、族長との面会です。

白零は依頼人には基本的には礼儀はあるのだが…

 俺達は水妖族オンディーヌの族長との面会した。


「ふふふ! よく来たな人間。わらわ水妖族オンディーヌの族長、リュンピじゃ。おもてなしの準備ができなくてすまないのぉ」


 この人(?)が族長か。

 以外と言うかなんというか歳が俺達と同じそうに見えるし、すごい特徴的だった。

 綺麗な青い肌に、いたるところにある魚のヒレのようなもの。

 身長は俺と同じくらいで、それでいて、気品と言うものが漂っている感じがする。


「いやいや、間違って来たのだから別にかまわねーよ。俺は金斬かなぎり白零はくれい。で、こっちは……」

三咲さんざき黒千代くろちよです。以後、よしなに」


 とりあえずは自己紹介で返す。

 ってか、千代はまだしも、ジャージにサンダルで偉い人に面会する俺って……

 まあ、今までの任務もそうだったのだが。


「さて、おぬしたちは確か事故でこちらの里に来たと言っていたのぉ」

「そういうことだ。よくあることなのか?」

「ふむ。普通はそうならないようにこちらから監視をしているのじゃが…」

「申し訳ありません。私の不手際です」


 申し訳なさそうに頭を下げるレイラさん。


「まあ、妾たちの種族ように人間に対して下等意識を持たないならまだいいが、他の種族の中には人間を排除しようとする輩がいるからのぉ」

「排除って……」


 殺すのかよ。


「今はもういないが酷い時には人間界から人間をさらって奴隷にするのもいたな。まあ、その後は他の種族からの制裁を受け、そのようなことはしないことになったのだが…」


 えげつないよ他種族。

 よかった俺達がここに現れて。


「さて、そなたたちは人間界に帰りたいかや?」

「そうだ。元の世界に帰りたいのだが…」

「ふうむ。それは今すぐには無理じゃろなぁ」


 え!?


「あの湖に潜れば帰れんじゃ……!?」

「いいや。“月の口”が開くのは向こうの世界で言うひと月に一度じゃ、その上もう閉じてしまっとるのう」

「そんな……」


 あと一か月も待たなきゃいけないのか。

 ああ、何だか沈んできた。


「あの、ちょっといいですか?」


 と、ここで千代が発言してきた。


「なんぞや? 発言を許可しよう」

「はい。元の世界の道はここだけではないのでしょうか?他へ行けば早いうちにたどり着けるのではないのでしょうか?」


 なに、他の所ならだと!?


「ふむ、鋭い質問じゃ。確かに他にも道はある。そこへ行けば、出口は違えど人間界へは戻れるのじゃ」


 ってことは……


「あの、教えてくれないか?俺達、早いうちに帰らないと心配する人がいるので」


 所長なんか正体不明の依頼を俺達に任せる事を心苦しくしてた。

 もし、俺達がいないことがばれてしまったら失踪者ってことになる。

 そうなると絶対所長は任務中に何かあったと思ってしまう。

 それだけは何とかしなくては、そう思ったのだが…


「ふうむ、安易にそれは教えられぬのよぅ」

「……どうしてだ?」

「ふむ、先ほども言ったが、妾たちは別じゃがこの世界では人間の事を見下している種族が多くてのぅ。このまま外へ出したら君たちが危険な目に合う恐れがあるからなぁ」


 危険な目だと?


「そなたたち人間の子供はまず不用意に外を出ず、ここで一か月待てばよかろ?」

「一か月も待てねぇよ!!」


 できるだけ所長の心配をなくすには…


「貴様! さっきからリュンピ様になんて口を……!」

「ふふふ、良いのじゃ。妾は威勢のいい子は好きなのじゃ。ただ……」


 リュンピさんはそう言うと指を鳴らした。

 するとレイラさんが前に出て、没収した武器を俺に渡した。


「……威勢だけの子は嫌いなのじゃ」

「……どういう事だ?」

「うむ、君は武器を持っている。つまり君は武芸を嗜んでいるようじゃな」

「そうだが、それはいったい……」

「これから君にはレイラと手合せしてもらおう。別に勝たなくともよい。もし、妾がある程度強いと認めたのならば好きなようにしよう」

「……もし、認められなかったらどうなんだ?」

「その時は、否が応にもここにいてもらう」


 なるほどな。わかりやすくていいじゃないか。


「リュンピ様、お下がりください」

「わかっとるわ。精霊術はなしじゃが、手抜きはするんじゃないぞ」

「わかっております」


 レイラさんは薙刀が武器か。ってか……


「武器ありで大丈夫なのか?」

「大丈夫だ。いざと言うときはリュンピ様が精霊術で治癒をするからな」


 精霊術? さっきからよくわからんが、大丈夫ってことなのだろう。なら…


「千代。俺に何があっても手出しは無用だ」

「うん。気を付けてね」

「ああ」


 俺も袋から武器を取り出す。

 それは、刀だ。

 二尺ほどの長さを持つ太刀だ。

 さて、と……


「貴様たちにはすまないと思っている。このような所に連れてしまって」

「いいんだ。もう済んだことだし」

「だからこそ君たちを危険な目に合わせたくはない。ここで大人しくしてくれないか」

「それは駄目だ。俺達は俺達の道を行く!」


 負けるわけにはいかない!


「いくぞ! 金斬白零。参る!」

「来い!」


 こうして俺は戦うことになったのだった。



             2



 一方その頃、人間界でのどこかの国のとある町で……

 夜道の中、一人の男が歩いていた。


『うあ~今日も疲れたなあ』


 男は特に何の特徴もない、普通の会社員だった。


『ふふふ、お兄さんちょっといいかい』

『え?』


 男を呼びとめた者は全身がローブに覆われており、顔が見えなかった。


『な、なんでしょうか?』


 男は警戒をした。

 当然だ。顔も見えない相手に呼び止められりゃ警戒もする。


『いや、なに。ちょっとお兄さんにやってほしいことが会ってなあ』

『やってほしいこと?言っておきますが僕にできることなどだかが知れていますが……』


 そう男は言うと、ローブの者はゆっくりと、嗤うように言った。


『なに、簡単さ。お兄さんには、僕達の……








   ……奴隷になってもらうだけさ!』


『……ひっ!』


 男は逃げ出した

 とにかく男は必死に走って逃げだした

 男は逃げ切れる自信があった。男は自分の足に自信があったのだ。そうそう簡単には捕まらないのだ。

 そう思ってたのだが……


『がっ!?』


 男は後頭部に打撃され、気絶してしまった。


『はっ! 人間ってホント遅いな! こりゃ一人でもよかったかな?』


 そう言うと、ほかの所から同じ格好の者たちが二人現れた。


『こいつで問題ないか?』

『ああ、こいつはここじゃ天涯孤独の身だ。特に目立ったこともないし、連れ去っても問題ない』

『じゃ、さっさと行こうぜ! 急がないと“月の口”が閉じるぜ』


 そういってローブ姿の者たちはどこかへ行ってしまったのだった。

 脇に男を抱えて……



              3



 また、幻界でのある所

 そこは火蛇族サラマンドラの集落だが……


「な、なんだお前等は……! 何でこんなことをするんだ!」


 そう言ったのは火蛇族サラマンドラの戦士だった。

 そんな彼の目の前にはたくさんの戦士の死体があった。

 肉弾戦では最高位を誇る種族が、あっという間に倒されたのだ。


 そんなたくさんの死体の中央に二人の人間がいた。

 一人は黒のロングヘアーに黒のロングコートに黒のグローブに黒のズボン、と全身黒ずくめの男がいたのだった。

 その上、男の左目には黒の眼帯がしており、左手には納刀した黒い刀が握られていた。


「……なんで? ……近づいたから……近づいたものは斬る……だから斬った……」

「そ、そんな理由で!」

「あは、だめだって♥」


 そしてもう一人は少女だった。

 少女は髪を金髪に染め、女子高生のような制服を身に着けており、腰のベルトにたくさんの鉈を吊るしていた。

 また、右手には大振りの鉈、左手には細くてよく斬れそうな剃刀を持っていた。


「もとはと言えば、迷子のあたしたちに向かって「奴隷にする」なんてことを言ったからだよ♥」

「ううっ……!」

「しかし不思議ね~、蜥蜴人間が実在したなんて。こりゃ殺し甲斐があるもんよ、っと!」


 そう言うと少女は右手に持った鉈を後ろへ投げた。

 すると、飛んで行った鉈は……


 ザクッ!


「ぎゃぁ……」


 死体に紛れ、奇襲しようとした戦士の頭を割ったのだった。

 そして、そのまま戦士は息絶えたのだった。


「ひぃ!」

「えっと……、ここのリーダーさんに言ってくれないかな?」

「な、なにをだ…、なにを要求するのだ!」

「ん~それはね♥」


 少女は言った。








「どうせなら奴隷じゃなくて、正式に雇わない? あたしたち《殺し屋》を♥」



                  4



 “月の口”とはなにもイギリスからだけではない。

 種族の集落ごとに場所は違ってくるのだ。

 それ故に“迷い子”の迷い方も違ってくるものだ。


 この時、

 この幻界にて、かつてない例でさまざまな人間が迷い込んできたのだった。

どうやって迷ってきたかは謎で

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