参話 大丈夫かこれ?
-前回のあらすじ-
現代を生きる用心棒、金斬白零と三咲黒千代はなんだかんだでイギリスでの依頼を終え、いやらしくはないホテルへ帰る途中、橋の上で自殺しそうな女性を発見する。すぐさま止めようとした白零だったが間抜けにも逆に自分が橋から落ちてしまうことになる。そのあと黒千代が後追い自殺のような飛び降りをした後、白零が黒千代をいやらしそうに抱き留め浮上したところ、何だかロンドンではなく洞窟のようなところになっており、その上武器を突きつけられたのであった。いったいどうなったことやら……
あ! あと作者のもう一つの作品『コンプレックスな反逆者たち』も読んでね♪
おい、あらすじ。省略するわ余計だわ貶めるわ適当だわいろいろと突っ込むところがあるんだが……
何より最もな所は……
「他作品を勧めるなぁ――――――――――――!」
「おい! うるさいぞ! 静かにしろ!」
「はい。すいません」
現在、俺と千代は牢屋にいたのであった。
特に枷とかはつけられてはいないが、俺の武器は没収された。
「ったく、なんでこんなことに……」
そう、何でこんなことになったかと言うと…
―――――――――――――――――――――――――――――――
何とか地面の上には避難できたのだが…
「答えてもらうぞ。貴様らは何者だ! たった二人で水妖族の里に侵入するとはいい度胸だが、見つかった以上話してもらうぞ!」
いやいやいや、里とか知らんし、なんだよ水妖族って。
「なんだか私たち、まるで攻め込んだみたいに思われているね」
「なに? そうでないというのか?」
「そうですよ。私たちは英吉利の倫敦って所で、橋から川に落ちてしまって、それで気が付いたらここにいたってことです」
俺の代わりに説明する千代。
ってか、ずいぶん冷静だな。
「なんだと? だとしたら貴様らは……」
「そう、そいつらは“迷い子”だ」
ん?
この声ってもしや…
「「「レイラ隊長!」」」
「レイラ隊長。“迷い子”とは本当ですか?」
「ああ。その白髪の少年は、私が“月の口”から入ろうとした所を自殺と勘違いしたようでな。振り払おうとしたのだが、誤って落としてしまったのだ」
あの時の……自殺しようとした女
いや、なんだかなりが変わっているが…
「どういうことだ! ここはどこで、こいつらは何者で、“月の口”ってのはいったい……」
「貴様! レイラ隊長に向かってなんて口を……!」
「よせ」
レイラと呼ばれた女性が静止する。
「とにかく、あなた達には説明をしておきたいが、こうなった以上リュンピ様に会わせないといけない。だからそれまでの間、ある所で待たれよ」
そういって俺達は案内されたのだが……
ガシャン!!
牢屋だった
「ってなんでだよ!」
「あらあら」
しかも、ひとつに二人は狭い
「すまないがそこで待っててくれないか?私はこのことをリュンピ様に報告するので、そなたはこの者たちに説明せよ」
「はっ!」
レイラは看守に説明を頼んだ後、族長とやらへ行ってい待ったのであった
―――――――――――――――――――――――――――――
そして、現在に至るという事だ
「はあ……何でこんなことに……」
「仕方がないよ零ちゃん。予想外の事だもの」
「そりゃ予想外だけどさぁ……」
看守さんの説明を以下のようにまとめると
この世界は幻界と呼ばれるところ。
その中でもここは水の一族、水妖族の里と言うところだ。
幻界は、水妖族、火蛇族、風精族、地人族、獣人族、鳥人族、屍霊族、そして希少種族らしい星霊族といるそうだ。
それぞれの種族がそれぞれの国家を築いている、と言う訳である。
で、俺達がここにいたのは、あの水面に移った月が人間界と幻界をつなぐ門であるらしく、あのレイラと呼ばれた女性はそれを監視していたのだが……
それが面倒なことになってここに来た、と
(いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!!)
本日何度目かのいやいやだった。
お・か・し・す・ぎ、だろこれ! 何でいきなりこんなファンタジーになってるんだよ!
作風おかしいだろこれ! 時代劇っぽいあらすじが台無しだよ!
「零ちゃん……」
「ん?どうした」
「寒いよ……」
そうだ、俺達全身水浸しなのに放っとかれてるし
このままじゃ風邪をひく
「おい! 何か着る物はないか! このまま過ごすには辛すぎるぞ!」
「すまない、水妖族の服は他の種族には着られないのだ。すまないがそのままでいてくれ」
くっ、なんて冷たいんだ。水だけに。
とりあえず俺は乾かすためにジャージの長袖の上とその下の半袖を脱いでタンクトップ姿になる
と、そこで千代が
「零ちゃん。脱いで……くっ付きましょ」
「へ?」
なんて言ったんだこの女
「たしか寒いときは肌と肌を合わせればいいんだね。だから……(シュルシュルシュル)」
「ちょ! こんなところで帯を解くなぁ――――――――!」
千代は和服を脱いで襦袢姿になっていた。
しかも、襦袢が濡れているので透け透けだ。いろいろ困る。
……ん!?
「何でお前は下着をつけてないんだ!?」
いや別に肝心なとこは見えていないからセーフだよ?
なんというか腰とか肩とかそれらしいものは見当たらないのだ。
なんでなんだよ!
「え?零ちゃん。和服と言うのはこの肌襦袢が下着だから別に着けていないわけじゃあ……」
「何時の時代だよ! ってか誰から聞いたんだ!それ!」
「お母様」
またか、またお母様なのか
何でそんなことを教えるんだよ
ってか! 今の今までそれだったの!? 危なすぎだろ!
「零ちゃん、抱き合いましょ」
「待て待て待て! まずは大事な所を隠せ―――――――――!」
千代は男に対する知識を何も知らない。
青江さんに調べさせたところ、千代の母親はどこかの名家のお嬢様だったらしい。
しかし、そのせいか友人だった男に騙され、複数の男に酷い目に逢わされ、無理やり子を孕むことになってしまったのだ。
千代の母親の男嫌いはその時付いたものだ。
しかも憎悪が付いた状態で。
その後、周囲の反対を押し切って産んだのが千代ってわけだ。
「え? なんで?」
「……………」
千代は母親にこう教えられた
“男には近づくな”と
よっぽど憎んでたのか、母親は千代にいかに男が醜いか、いかに男が悪いのかを教えたそうだ
なにせ学校には行かせず通信教育させるほどの徹底ぶりだ
ってか、義務教育で通信教育は可能なのか?
また、世間知らずにならないよう母親同伴で外出しているので馬鹿ではない。
「俺は男! 千代は女! わかる!?」
「大丈夫。零ちゃんは私に酷いことはしないって信じてるから」
言っておくが千代は痴女じゃない。駄洒落じゃないぞ。
千代は母親の言いつけを守り、男には近づかないようにした。
俺を除いてはな。
千代は男を知らなさすぎる。
母親からの教えを抜くとほぼ無知の状態だ。
なにせこの女はいつも……
「どうして男は女の大きなお胸が好きなの?」
「口と口をくっつけるのは何なの?」
「男ってどんな体なの?」
など、真顔で訊かれたのだ。挙句の果てには……
「赤ちゃんってどうやってつくるの?」
とにかく男どころか異性とのことについては何にも知らないのである。(ちなみに「自分で調べて」と答えた)
唯一の母親の教えは俺に対してはどれも当てはまらないらしい。
千代にとって俺は男の中では不思議な部類にあるそうだ
自分はそうは思わないんだがなぁ。
とにかく俺は無情に信頼されているようだ
こういう事に関しては危機感が薄い女なのであった。
「さっきからうるさいぞ貴様! 静かにしないと溺死させるぞ!」
「俺!? 俺のせいなのこれ!? 俺の味方はいないの!?」
「まったく、静かに待てないのか君たちは……」
と、ここでレイラが現れた
「君たちにはリュンピ様、つまり族長に会わせてもらおう。あと、替えの服はないが早く乾かす事は出来るのでもうしばらくそのままで待たれよ」
「だそうだ。千代、はいこれ、って重っ!? 重たすぎだろこれ!」
「ありがとう、零ちゃん。はい、ジャージ」
「お、おお、ありがと……」
とにかく俺は無駄に叫んだあと、水妖族の族長に会いに行ったのであった。