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ここからはじまる物語 【改訂版】  作者: 滝沢美月
第1章 はじまりのモーメント
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閑話  あの頃のわたしたち



 中学の3年間ずっと同じクラスで、ずっと気になっていた男の子。

 サラサラの黒髪、通った鼻筋、落ち着いた雰囲気をまとった彼の事がずっと好きだった。

 きっかけはたぶん、単純なこと。

 中学1年の時、初めての席替えで隣の席になった彼が普段はシャイで無口なのに、私と話す時はよく笑ってくれて、ちょっとした会話が嬉しくて、自然と好きになっていたんだと思う。

 席が離れてからも時々喋って、男の子の中では1番仲が良かった。彼にとっても私が1番仲の良い女の子で、特別だと思っていた。

 だから好きって気持ちを伝えなくても、こんなに仲がいいならそれでいいと思っていた。

 中学2年の時も中学3年の時も、その先も――

 この関係がずっと続くと思っていた。

 でも、それは私の勝手な思い込みだったんだ。



 中学3年の時。

 初めて同じクラスになったけど席が前後ですぐに仲良くなった奈緒が――彼の事を好きだと言った時。

 私も好きだとは言えなかった。

 私も好きだと――言えばよかったのに。



 それから間もなくして、奈緒が彼に告白して付き合うことになったと聞いた。その時になって、私が彼にとって特別な存在じゃなかったと知る。

 奈緒と彼が付き合いだしても彼は私に今まで通り接してくれて、いっぱいいっぱい話したり、笑ったりした。

 だから、特別じゃなくてもいいかなって思った。

 彼にとって、女の子として1番じゃなくても、女友達として1番だったらいいかなって。

 でも、そんなのは嘘――


「あまり話しかけないでほしい。彼女が心配するから、彼女以外の女の子とは、あまり仲良くできない」


 そう彼に言われて、気付いた……

 今更気づいても、遅いのにね。

 私は、女友達としても1番ではなくなった。

 彼の中で、彼女の奈緒が1番。それ以外は1番もなにもないんだって、はっきり言われてしまった。



 もし、私が先に告白していたら。

 もしあの時、私が奈緒に本当の気持ちを伝えていたら――何か変わっていたのかな?

 そう考えることもあるけど、いくら考えてももうあの頃のわたしたちに戻ることはできないのにね。

 彼と話さなくなってからあっと言う間に月日が経ち、中学を卒業。同じ高校に進学したことも知らずに、高校に入学してしばらく経った頃に校内で見かけて知ることになる。



 どこで、なにを間違えたのかな――

 あの頃のわたしたちは、あんなに仲が良かったのに。彼女とか彼氏とか関係なく、私も、奈緒も、彼も。みんなみんな、仲が良かったのに。

 あれから、2年が経って。

 私と奈緒は時々メールをするのみ。奈緒が彼と付き合いだしてからは、一緒に遊ぶことはほとんどなくなって。

 私と彼は同じ高校に進学。1年ぶりに同じクラスになったけど、以前とは違って話すこともなく。

 彼と奈緒は……

 この2年に2人の間にあったことを私は知らないけど。

 今、彼――御堂君と奈緒は、別れたという。



 あの頃のわたしたちは2年後――こんな風になっているとは思いもしないんだろうな。




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