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第13話  禁断の遭遇



 時計を見るとすでに21時20分で、たぬき亭での同窓会は19時を過ぎた頃に終わって、それから夕貴に連れられて2次会のカラオケに2時間くらい行って21時にはほとんどの同級生が帰っていく中、中野とか夕貴とか高校生になってからもよく遊ぶメンバー数人で中野の家に押しかけて徹夜でゲームをするという流れになっていた。だけど、たぬき亭から中野の家まで来る間の私の記憶はおぼろげで――

 とりあえず家に連絡をしなきゃと思い鞄にしまっていた携帯を取り出し画面を開くと、自宅からの着信履歴がびっしりと画面を埋め尽くしている。

 19時には同窓会が終わるから20時前には家に帰るってお母さんには言ってあったのを思い出して、顔からさぁーっと血の気が引く。

 電話ができる静かな場所を探し私は慌てて中野の部屋から1階に降りて玄関を出る。中野の家の前の細い道路を進み、大通りに面した隣の敷地にある駐車場に行き、家に電話をする。お母さんには遅くまで連絡しなくてすっごく怒られたけど、中野の家にいることを伝えて、ダメもとで泊ってもいいかと聞くと、もう夜も遅いから明日の朝にはちゃんと帰って来ることを約束させられて、泊りを許してもらえた。

 中野は中学の同級生だからうちと中野の家までは30分もかからないで歩いて帰れるけど夜道は危険だとお母さんは言って、それに中学の頃にも何度か中野の家には皆で泊ったことがあるからわりとすんなりと外泊の許可が出たのだ。

 はぁー。

 電話を切ってどっと安堵のため息をついて、大通りに背中を向けて駐車場のタイヤ止めに腰をおろす。

 駐車場に停まっている車は少なくて、私が座った位置からは中野の家が見える。

 今日はいろんなことがありすぎて、なんだか目眩がするよ。

 考えないといけないことは一杯あるのに、胸が苦しくて頭が働かない。

 駐車場でしばらくぼぉーっと座っていると。

 ピロロロン。

 両手の中で握りしめていた携帯が鳴って、画面を見ると夕貴からの電話だった。


「はい」

『もしもし、譲子? いまどこにいるのー? もしかして帰っちゃったの!?』


 受話器からは夕貴の声以外に男子の笑い声が混じっていて聞きとりづらい。


「あっ、今、外で家に電話してただけだから」

『なんだー、急にいなくなるから心配したよー』

「ごめーん、もうちょっとしたら戻るから心配しないで」


 そう言って電話を切る。

 再び大きなため息をついて、足の上に肘をついてその上に顔を乗せ、たぬき亭での事を思い出す。

 私……御堂君に好きって言われたんだよね。

 付き合って――って言われたんだよね、なんだか現実感がないな。

 中学の頃、大好きだった御堂君に、告白されちゃったんだよ……私。

 あの時の御堂君の真剣な顔を思い出すと、切なくて、なんでか涙が溢れてきて視界が滲み、胸がドキドキしてくる。

 どうしたらいいんだろう――

 まさか告白されるとは思ってもみなくて。

 御堂君の事は好きだったけど、けど――

 そう、もう過去形――なんだよね。好きだったけど、2年間話さなかったのに今更付き合うとか考えられないよ。

 じゃあ、断るの――?

 そう思った時、中野の家から出てきた御堂君の後ろ姿が見える。

 あっ、御堂君だ。どうしたんだろう――

 そう考えただけで、胸が切なく締め付けられる。

 御堂君は首を動かして辺りを見回し、振り返ったその視線と目が合う。

 私を見てる――

 ドキンっ、ドキンっ。

 御堂君に見つめられて鼓動が速くなる。

 私はまだこんなに御堂君にドキドキするのに――断るの?

 そんな考えが頭をよぎる。

 御堂君は振り返った格好のまましばらく私を見つめ、それから踵を返してゆっくりと私に近づいてくる。私から2歩の距離を取って細い道を背に駐車場を囲むフェンスに寄りかかって立つ。

 たったそれだけの行動がすごく長く感じて、私はその間ドキドキしっぱなしだった。

 御堂君の服装は、細身の黒いパンツに紺と白のTシャツを2枚重ね着している。長い足をからめてフェンスに寄りかかる姿は、それだけで絵になるくらい綺麗で、見入ってしまう。

 ああ、私――まだ御堂君に未練たらたら、そう思った。


「桜庭がいないって三井が大騒ぎしてた」


 優しい笑みを浮かべ、御堂君が横目で私を見る。


「さっき夕貴から電話があったよ。ちょっと家に電話してただけなんだ」


 そう言って御堂君から視線をそらして、額にかかった髪を横に分けて耳にかけて地面を見つめる。しばらくの沈黙の後。


「俺も心配した。俺のせいで悩ませてるかと思って――心配した」


 えっ……

 ぱっと顔を上げると、御堂君と視線があう。御堂君の瞳の中に優しさと切なさがきらめいて、その顔があまりにも綺麗で胸に沁み入って、涙が出そうになる――


「違うの、私は御堂君のことが――」


 そう言った時。



「譲子さんっ!」


 カンナの声がして、声のした大通りの方に振り返る。

 見ると大通りの向こう側で、ガードレールに手をかけて身を乗り出したカンナがこっちを見ている。私の視線の先でカンナはガードレールを軽やかに飛び越え、道路を走る車をよけながらすごい勢いで駆けてきて、私の後ろに立つ。

 はぁー、はぁーと肩で呼吸を整えながら額にじわりと浮かんだ汗を乱暴に腕で拭うと、私ではなくて横に立っている御堂君を――何かを強く思い定めたような真剣な表情で見つめた。

 しばらく御堂君とカンナが無言で視線を交わした後、私を見降ろしてカンナが切羽詰まったような口調で言う。


「譲子さん、なんでこいつと?」


 それなのに私は、突然目の前に現れたカンナに驚いて、間抜けなことを聞いてしまう。


「カンナこそ、どうしてここに?」

「俺の事はどうだっていいんだよ! 今日はずっとコイツと会ってたのか?」


 いつもの穏やかなカンナからは想像も出来ない様な、苛立ちを露わにした乱暴な口調で問い詰めてくる。

 カンナがあまりにも怖い形相で聞いてくるから背中に冷たい汗滲み、振り返った姿勢のまま私は驚きのあまりぽかんと口を開けてカンナを見上げた。




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