君となら、叶わぬ夢へも
生まれた時から共にあった二人が、
すべてを捨てて逃げる物語です。
主従であり、家族であり、相棒である二人が、
王国の追手から逃れながら、自分たちの未来を掴もうとする。
追われる日々の中で、それでも二人は小さな幸せを見つけていく。
そんな儚くも温かい逃避行の物語を、どうか楽しんでいただければ幸いです。
僕たちシオンとラナは一緒に育ち、苦楽を共にした。
そして僕たちは今日、魔法測定を受ける。
「ではこの魔水晶に手をかざしてください。」
僕たちはいわれた通りに手をかざす。
その瞬間、魔水晶にひびが入り、そして割れた。
「し…少々お待ちくださいっ!!」
聖女さんが奥からさらに大きな魔水晶をもってきて僕の目の前に置いた。
「ではこちらに先ほどと同じように手をかざしてください。」
次は割れないでくれよ…
魔水晶が思わず目を閉じるほどのまぶしい光を放つ。
「さすがは貴族様といったところでしょうか。私、貴族様の魔法測定には初めて立ち会うのですがこんな数値が出るものなのですね。」
「あなたたち二人は魔法において、すでに聖女である私をはるかに上回っております。」
会場がざわつく。
「それで結果はどうなんだ?」
「まず魔力ですが、最初の魔力測定を受ける8歳での平均は400程度であるのに対して、シオン様は9200、ラナ様は8600の魔力をお持ちです。」
さらに会場がざわつく。
どうやら僕たちはすごいらしい。
「続いて魔法適正ですが、シオン様は火、水、風、土の四大属性のすべてにおいて一般常識を超越した素質がございます。ラナ様は四大属性の資質はありませんがそれ以外の魔法ならどのような魔法でも扱えるとでています。」
「神童だ。」
「神童が誕生した。」
神童か、悪い気分ではない。
「シオン、やったね。私たちの夢、叶えられそうだよ。」
「そうだな。」
僕たちの夢は二人でこの国最高の冒険者になること。
その第一段階は、満足な結果でクリアできたようだ。
* * *
あの魔法測定から四年、僕たちは冒険者ギルドに登録できる年齢に達したので父であるレオニダス・カイエン・ラファール侯爵に冒険者になる許可をもらいに父の書斎にきていた。
「父上、僕は12歳となり冒険者ギルドに登録できる歳になりました。どうか、冒険者になる許可をいただけませんでしょうか。」
父がすごい剣幕で僕をにらむ
「だめだ。お前は私の後継者となってもらう。お前は生まれた時点で冒険者になる道などないのだよ。」
「どうにかなりませんか。」
「残念だがな。」
「な…ならラナだけでもお願いします!!」
「待ってシオン、私はシオンと冒険者になりたいの!!シオンとじゃなきゃ嫌!!」
「残念だがラナにも自由を与えるつもりはない」
「ラナ、お前はシオンのメイドとして一生をシオンに捧げてもらう。」
「これは二人が生まれた時点できまっていたことだ。」
「僕たちは神童と言われていたんですよ?僕たちが冒険者になれば魔族との優劣も変わるかもしれない。それでもだめだというのですか?!」
何で僕たちは冒険者になるべきもののように生まれてきたのに冒険者になれないんだ。
「だめだ。もう懲りただろう。この話はおわりだ。ラナ、シオンを一生支えてくれたまえよ。」
父が書斎からでていく。
「ごめんラナ、無理だった。悔しいけどここは諦めるしかない。」
「いいのよシオン。ありがとう。別に私たちは引き離されるわけではないんだから。」
* * *
そして時は過ぎていき、僕たちは18歳、戦に駆り出される年齢になった。
僕たちが最初に出陣したのは王国で内乱が起きたときだった。
その戦いの戦功により、騎士爵の爵位を与えられた。
それは大変名誉なことだが爵位を与えられるということは正式に貴族の仲間入りをするということだ。
名誉なことのはずなのに、胸の奥にはどうしようもない切なさが残った。
貴族になれば、自由は減り、ラナと夢見た未来も遠ざかっていく。
それが、思っていた以上に苦しく感じられた。
「シオン様、お疲れですか?」
ラナが僕の専属メイドになったあの日から、ラナは僕のことを様づけで呼ぶようになった。
「様なんてつけなくていいんだぞラナ。ここは二人しかいないしな。」
「ふたっ//ゴホンッ いえ、私はあなたのメイドですので。」
なにを動揺しているんだ?
「それでいいならいいが…」
「またいつか、昔のように二人で自由に草原を駆け回りたいな。」
「ええ、またいつか。」
読んでくださりありがとうございます!
才能があるのに自由がない二人が、
それでも一緒に生きようとする物語を書きたくて始めました。
次回もよろしくお願いします。




