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落とした携帯が見つからない

掲載日:2026/03/12

これは私が大学生の時のお話です。


大学2年生となり人間関係にも恵まれた私は、友達5人グループでよくカラオケに行ったり、友達の家で宅飲みしてたんです。


 ある日、その5人組で居酒屋で飲んだあと、ちょっと飲み足りない空気になりいつも行かせてもらっている友達の家で宅飲みすることになったんです。


みんなでワイワイ飲んでいて、2.3時間経った頃でしょっか。友達の1人が言ったんです。


「あれ待って!携帯がない!」


記憶を辿ると、帰ってきた時の最寄り駅にあるトイレに行った際に置き忘れたみたいなんです。駅員さんに私の携帯から電話をかけてスマホの置き忘れがないか確かめてもらおうとしました。


通話中になったと思ったら、


「ザーザー…ザーザー…」


繋がってはいるのに駅員さんからの応答はなく雑音だけが鳴っていました。

それがちょっと続いたあとプツンと電話が切れました。

ちょっと不気味でしたが酔っていた私たちは


「ふざけんなよ~」


と笑い話で済ませて ''しまいました。"


「もしかしたら駅から家までの道中に落ちてるかもよ?」


1人の友達がそう言い、失くした友達と私の2人で見に行ってみることにしたんです。駅までは15分ほどかかる距離なのですが、駅まで2人で念入りに探してみても携帯は見つかりませんでした。夜遅かったこともありその日は諦めてまた明日駅に問い合わせてみることにし帰りました。


 友達宅へ戻ったあとみんなで寝落ちし、次の日のお昼頃解散しました。

携帯を失くした子と私は学校が全休だったため、解散後に再度駅に問い合わせてみました。今回は駅員さんが電話に出てくれて携帯の落し物がないか聞きました。


「確認してみたところ直近で携帯の紛失物はないですね、女子トイレにも見当たりませんでした。」


「そうでしたか。。」


昨日の電話のノイズは何だったのか気になり尋ねてみると、


「おっしゃられた時刻ですと、昨日の最終列車はとうに過ぎており、駅員のものは全員退勤後ですね。お電話いただいた履歴もございません。」


2人で背筋が凍りました。昨日電話がつながり、流れていたノイズは何だったのか。でもなぜかそのことは駅員さんにそれ以上話す気にはなれませんでした。

電話を終えたあと私は1つ思いつきました。


「ねえ!うちら位置情報交換してるじゃん!」


どうして昨日のうちに気付かなかったのだろうと笑い、位置情報アプリを開いてみると、その携帯は東京の浅草を指していました。有り得ないと思いました。なんせここは昨日泊まった友達宅がある杉並区なんです。


「これ、人が持ってるよね」


「それな?!私の携帯売られたりなんかしたら、たまったもんじゃないんだけど!!」


携帯を盗まれたことに無性に腹が立った友達は今携帯があるところに行こうと提案しました。その日予定も特になかった私も一緒に行くことにし、電車に乗り浅草に向かい始めました。


でも1つ不思議なことがあるんです。それはあの終電の時刻からよくまあ浅草まで行ったなぁと。乗り換えも必要になるため有り得ないと思いましたが、まあ電車のあとタクシーなり乗ったのでしょう。

 

乗り換えを済まし、次の電車で隣に座っている友達の顔を見てみると、さっきまで携帯を失くした不安さや盗まれたであろう、いら立ちを顔にしていたのに、どこか冷静なんです。


次第に友達の指先が小刻みに震えだし、下唇を強く噛み始めたんです。


私が違和感を覚え始めたのはここからでした。


 そんなことを思っているうちに浅草駅到着のアナウンスが流れました。

電車を降りて再度位置情報を見てみると駅からそう遠くないようです。


地図を頼りに歩いて10分ほど。

 そこは古い風俗店でした。

看板の電気は消えていて、入り口には「CLOSE」の札。


昼間なのに店の奥は妙に暗く、ガラス越しの奥の様子はほとんど見えませんでした。


「まさか風俗嬢が拾ってたとはね笑」


私がそう言う隣で友達は無表情でCLOSEの看板を眺めていました。

というよりガラス越しでお店のその奥の誰かを見ているような目をしていました。

普段は明るくて楽観的な子なのですが別人のようでした。友達の普段と違う様子に良からぬ予感がしました。


「.....帰ろっか」


そう言うと、友達は少し遅れて頷きました。

表情はほとんどありませんでした。


さっきまで怒っていたはずなのに、

怒りでも不安でもない、何かが抜け落ちたような顔でした。


帰りの電車の中で、ようやく友達が口を開きました。


「……もう携帯のことはいい」


「え?」


「怖いっていうより、気持ち悪いの。

 誰かに……警告された感じがする」


その言い方が妙に真剣で、私はそれ以上何も言えませんでした。


 家に帰ってからも、私はどうしても携帯の位置情報が気になりました。

ベッドに寝転がりながら、もう一度アプリを開きました。

位置情報の指す場所が変わっていました。


浅草ではありません。


茨城県の、海に近い山の方。

地図を拡大すると、周囲は竹林しかない場所でした。


道路すらほとんどない、真っ白な地図の中に

ぽつんと友達の携帯のマークだけがありました。


何度もアプリを再起動しました。

でも位置情報は変わりませんでした。


そのまま数日後、位置情報は突然消えました。

充電が切れたのだと思います。


 それと同じ頃から、その友達が学校に顔をださくなりました。携帯は新しくなったのかはわかりませんが、新しい連絡先を聞いていなかったため何があったのか聞くこともできませんでした。


 それからもう数日経ったある日、私は適当にX(旧Twitter)を眺めていたところ、あるニュースの記事が目に入りました。


 『茨城県〇✕市 山奥にて東京都台東区浅草の風俗店で働く桐谷 舞(仮名)さんが体をナイフの様なもので刺された痕がある状態で発見。容疑者は未だに見つからず。』


場所を見た瞬間、私の手から携帯が落ちました。


記事に書かれていた発見場所が、あの位置情報とほとんど一致していたからです。


風俗店に一緒に行った友達が学校に来なくなった日、携帯の位置情報が山奥になって動かなくなった日、ふたつともタイミングが合うんです。

考えたくはないですが、その友達が携帯を持った人を殺してしまった。辻褄は合うんです。というより、こうとしか考えられませんでした。


 それ以降、犯人が見つかったというニュースはなく、友達は自然と退学という形になったそうです。


 私はどうもすっきりしない結果に、社会人となった今もこの事件が頭をよぎり、気がかりでなりません。


 真相を知りたい自分と、このまま何も知らないまま蓋をするべきなんじゃないか、と思う自分がいます。



※この物語は実在の人物や団体などとは関係ありません。私の実体験とフィクションを交えて作成されています。


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― 新着の感想 ―
拝読しました。位置情報が示す「有り得ない場所」の不気味さと、友人の変貌ぶりに背筋が凍りました。ニュースと符号した瞬間の絶望感が凄まじいですね! 私も執筆しており(N7733LL)、この静かな恐怖の描き…
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