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5話


な、なんとか西の森に到着した。

明日にしておけばよかったと、今更ながら後悔中。

貴族のお嬢様の体力を、過信し過ぎていた。

ここまで来た以上、依頼はなんとしてもやり遂げて帰ろう。


「『王都西の森』『王都西の洞窟』!」


ポンッ


お馴染みの軽い音で出現したのは『王都西の森』の本と『王都西の洞窟』の本。

目次を見て、パラパラとページを捲る。

目的の箇所を見つけた。

ライト石、ヒエン草、ウルカヅラの生息場所が、ご丁寧に地図付きで載ってある。

生息場所と、採取方法、実物の絵を見て、本を抱えながら西の森に足を踏み入れた。


「あ!『私』!」


ポンッ

 

『私』の本を出すのを忘れていた。

今日の日付のページを開き、危険な魔物と遭遇しないことを確認して、改めて歩き出した。

現在地の地図がついているのも、すごく便利。


『私』で現在地を確認しつつ、『王都西の森』で生息場所を照らし合わせる。

普通に採取したら、もっと時間がかかっただろう。

ヒエン草もウルカヅラも、見つけにくい植物らしいから。


「ここら辺に…あ、ヒエン草見っけ。」


ヒエン草は根っこも利用されるから、丁寧に土を掘って採取する。

手がドロドロだ。


採取用の手袋と、ナイフ、護身用の短剣、保存袋も買わないと。

思わす出費に、気づいてしまった。

でもこれらがないと、採取が難しいから。

必要経費として、明日買いに行こう。


頭の中で、必要なものをリストアップしていると、ウルカヅラを見つけた。

一見見たら、ただの蔦にしか見えない。

本に書いている絵と見比べても、間違いない。


ウルカヅラはどこでもいいみたいだから、目につく蔦を適当に手で千切る。

よかった、手で千切れた。

やっぱりナイフは必要。

絶対に買わないと!


最後はライト石。

『王都西の洞窟』の本で採取場所を確認した。

ここから30分くらい歩けば着く距離だ。


再度『私』の本で、危険が迫っていないか確認。


「このまま真っ直ぐ行ったら、ホーンラビットの巣と遭遇するから…右に迂回して行こう。」


確認しておいて良かった。

 

時々本を確認しながら、歩くこと30分。

西の洞窟に着いた。

ツルハシがなくても採取出来ますようにと祈りながら、洞窟の中に入った。


しばらく真っ直ぐ歩いていると、前方が明るく光っているのが見えた。


「わぁ…これがライト石…綺麗。」


プラネタリウムに入り込んだような、星々のように光るライト石に、しばらくうっとりと眺めていた。

なかなか視線を引き剥がせないが、仕事をしなければ。

幸いライト石は脆いみたいで、周辺を少し蹴ったら、ポロポロと落ちてきた。


「20個採取完了!」


あとは帰るだけ。

『私』を確認して、危険地帯を避けて、西の森から出たのだった。

森から出ると、夕日が街道を照らしていた。

これから二時間かけて帰るのか、とげんなりしながら、早足で帰路に着いたのだった。


門が閉まる前に街に到着し、直接冒険者ギルドに向かう。

左右の店や家からは、夕飯のいい匂いが漂っている。


私の職業が『作家』じゃなければ、こんなにドロドロにならず、今頃夕食を食べてたのかな?


暗い思考を、頭を振って追い出す。


私は職業『作家』で生きていく。

そう決めたんだ。

たら、れば、なんて意味がないことを、考えるのは止めよう。

前しか進めないんだから。

進むしかないんだ。


冒険者ギルドで換金してもらって、すぐに宿に戻るのだった。




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