4話
背中に突き刺さる視線を感じつつ、堂々とした足取りで受付に近づいた。
新規登録のブースは一番左。
受付は、中年のお兄さんだった。
ちょっぴり、残念。
少々気落ちしながら、お兄さんに声をかけ…ようとしたら、声をかけられた。
…怪しかっただろうか?
「いらっしゃい。新規登録で間違いないかい?」
「うん。そうだよ。」
「登録料は銀貨1枚だ。」
私は、袋から出した銀貨を一枚取り出して、カウンターに置いた。
「説明はいるかい?」
「いえ、知っているから、大丈夫。」
全部知っている。
『この世界』の本に、細かく、それこそ裏事情まで書いてあったから。
みんなが知っている情報と、知らない情報を分別しないといけないが。
「申請書に必要なことを記入してくれ。字が書けなければ、有料で代筆するが?」
「大丈夫。」
ーーー
新規登録申請書
名前 シアンリーゼ
特技 採取
ーーー
「これで、よろしく。」
「採取専門か?」
「討伐は出来なくはないけど、職業的に苦手かな。採取の方が断然いい。」
「じゃあ、採取専門で登録しとくか。討伐込みでランク下がりそうなら、採取専門にしといたほうがランクが上がりやすいだろ。」
「じゃあ、それでよろしく。」
「番号札持って待ってな。」
「わかった。」
1番の番号札を持って、カウンターを離れた。
どんな依頼があるか気になったので、採取専門の依頼ボードを確認することにした。
ーーー
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ライト石 20個 西の洞窟
ヒエン草 10束 西の森
黒晶石 10個 東の洞窟
ウルカヅラ 20束 西の森
水光草 20束 東の森
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ーーー
全部知っている素材ばかりだ。
採取専門なら、なんとかやっていけそうで安心する。
なんたって、『作家』があるからね。
ライト石、ヒエン草、ウルカヅラの依頼書を剥がした。
「番号札1の方ー。」
呼ばれたみたいだ。
「これがギルド証。身分証になるやつな。紛失したらすぐにギルドに申し出ること。再発行は銀貨3枚だ。ランクは1番下のF。Eに上がるのには、20回連続で採取依頼をこなせば上がる。まあ、頑張れ。」
「ありがとう。」
先ほど剥がした依頼書を、依頼受付に持って行く。
今度は若いお姉さんだった。
美人より、可愛いよりの人だ。
「はい、これで受理されました。いってらっしゃいませ。」
「ありがとう。」
さて早速、冒険者一日目を開始しますか。
西の森まで歩いて二時間。
今の時間は、ちょうどお昼を過ぎたばかりだから、往復しても夕方には帰ってこれる。
よし、頑張ろー!




