3話
職業『作家』。
とんでもない、職業だった事がわかった。
だが、出来ない事もあった。
『私』の物語は、干渉できない事がわかった。
読むことだけは出来たので、非常に助かる。
ただ、抜け道はある。
例えば、『私』の本に『私が森で薬草を見つけた』と書くことは出来ない。
だが、『森』の本に『作家の少女が薬草を見つけた』と書くことは出来る。
もしくは、『森』の本に『薬草が〜にある』と書いて、私が見つける事は出来る。
これらの抜け道があれば、基本何でも出来ると思う。
そして物語に干渉しているときは、世界が止まって見える。
本当に止まっているのか、止まっているように見えるくらいゆっくりなのか、は、わからないが。
生きるためには仕事が必要だ。
何のツテもない、子どもが就ける仕事には限りがある。
春を売るか、冒険者になるか、だ。
もちろん冒険者になる、一択だ。
冒険者になれば身分証がもらえる。
冒険者の身分証なら、国も街も自由に行き来できる。
まずは冒険者ギルドに行って、身分証をもらったら、明日には王都を出よう。
王都の物価は高すぎる。
それにどうせなら、この世界を見てまわりたい。
『この世界』で知ったことを、この目で見てみたい。
目標を決めた私は、早速冒険者ギルドに向かうのだった。
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冒険者ギルド。
世界各地に存在する独立機関。
本部は、ギルド都市国家にある。
街のゴミ掃除から、迷宮探索まで、ありとあらゆる仕事を仲介する場所でもある。
仕事を失敗すれば、当然ペナルティがある。
また、多くの人が集まる場所には、多くの情報が飛び交うため、裏では情報屋の側面も持つ。
一度冒険者ギルドに睨まれれば、国家が滅ぶとまで噂される。
だから各国は、冒険者ギルドと良好な関係を築いてきた。
不正は許さず、完全実力主義。
力が全ての世界で、ランクによって厳密に管理されている。
ランクは上から、S、A、B、C、D、E、F。
Fランクは見習い、Cランクからはベテラン冒険者と呼ばれる。
王都の冒険者ギルドは、平民街の大通りのど真ん中にある大きな建物だ。
正面に盾と剣の看板がかかっている。
文字が読めない人でも、わかるようになっている。
扉は普通の木の扉だった。
扉を押して入ると、正面には受付のお兄さんやお姉さんがいる。
ブースごとで区切られているのは、横から見えないようにとの配慮だろうか。
右手に依頼ボード。
数名の冒険者が、依頼ボードの前で思案していた。
左は酒場…ではなく、休憩できるスペースのようだ。
受付と休憩スペースの間には、地下につながる階段と上階につながる階段があった。
私は意を決して、新規登録のブースに向かった。




