2話
なんとか宿をゲットした。
お祭りの期間でなくて、本当に良かった。
ただ、子どもが一人で泊まることに、宿の人には訝しげな目で見られたけど。
お金があると分かれば、問題なく泊まれた。
宿が確保できたら、次に考えることは、仕事だ。
働かないと、生きてはいけない。
私の職業は『作家』。
『作家』は、本が売れないと仕事にならない。
けれどこの世界は、例の如く、紙が高い。
『作家』として活動するなら、紙は必須になってくる。
でも、紙が高くて手に入らない。
…詰んでる。
紙の件は、今は置いておこう。
職業『作家』について考えよう。
よく物語であるのは、拡大解釈だ。
解釈の仕方で、弱いスキルが強いスキルになる、という小説を読んだことがある。
むしろ、私の好きな部類だった。
…ん?
よく物語であるのは?
小説?
…………あ。
この世界は、前世でいう夢のような、物語のような世界だ。
この世界は、物語。
物語を書くのは、『作家』。
つまり『作家』が、この世界の物語を書くことができるのではないか。
この世界を『作家』の私が、好きに書き換えて仕舞えばいいのでは?
この世界を『書き換え』れば、もしくは『書き足し』て仕舞えば、お金を作ることも、どんな仕事にでもつけるのでは?
私は、この世界を書く『作家』になろう。
そう決意した時だった。
ポンッ
…ん?
軽い音ともに、一冊の本が出てきた。
本の題名は、『この世界』。
『この世界』の物語の本だ。
私は、その本を食い入るように読み込んだ。
その本には、この世界の常識から秘密まで、すべてが書かれてあった。
普通では知らない、この世界のことを知ってしまったが、勉強にはなった。
この世界の常識が分かれば、こっちのものだ。
よし、もっと職業を極めよう。
「『イランテ侯爵家』の物語!」
ポンッ
再び、軽い音ともに、『イランテ侯爵家』の本が出てきた。
そこにはイランテ侯爵家、私の生家の歴史が書かれていた。
その中に、私が父に勘当されたことが書かれていた。
私の存在をイランテ侯爵家から『削除』しようとした。
が、私自身をこの世界から『削除』されそうと思い直し、それは止めておいた。
出来る事と出来ない事が、本能的にわかった。
そして物語に干渉する行為の結果も、何となくわかるようになった。
『イランテ侯爵家』の本はもう必要ないので、『書架』に戻した。
どうやら物語の本は『書架』に収納されていて、私は自由に取り出せるようだ。
職業『作家』のことが、何となくわかった。
『書架』に収納されている本を自由に取り出し、その物語に干渉する事が出来る。
それが職業『作家』だ。




