1話
私がそれに気がついたのは、父に勘当を言い渡された時だった。
この世界は全て、神から与えられた職業で決まる。
12歳で神殿に行き、神から職業を与えられるのだ。
その職業によって、将来の仕事を決める。
結婚すら左右されるほど、とても重要なものなのだ。
もちろん、職業と違う仕事をすることは出来る。
けれど職業が仕事の人と比べると、どうしても劣ってしまう。
だからほとんどの人は、職業を参考に仕事を探す。
稀に真逆の仕事を選んで、逆光を楽しみたいという人も、一定数いるのだが。
それは特殊な例なので置いておく。
幼い子どものうちは、可能性に溢れている。
不安定な職業が安定するのは、12歳なのだ。
12歳の誕生日に神殿に行って、神から与えられた職業を教えてもらう。
これは王族だろうが、スラムの孤児だろうが変わりはない。
全ての子どもが、無料で受けられるものなのだ。
まあ、貴族や王族は見栄があるから、寄付金を弾むらしいが。
どうして私が、そんなことを考えているのかというと、私の職業が『作家』だったからだ。
前世の私が、なりたかった職業。
けれど今世はなりたくなかった。
何故かって?
それは、『作家』の地位が低いからだ。
まあ低いと言っても、ものすごく低いわけではない。
たが、貴族の基準で考えると、ものすごく低いのだ。
私の生家は、侯爵家。
貴族としては、上から二番目。
つまり侯爵家のご令嬢として、職業『作家』は、家門の恥となるのだ。
で、冒頭の勘当の話に繋がるわけだ。
侯爵邸に帰ってきてすぐ、手切れ金を渡されて、絶縁状に名前を書かされた。
勘当と前世の衝撃のあまり、言われるがままに名前を書いた。
周りを見ると、他の家族からも蔑む視線が投げられて、心が痛んだ。
そして私は、12年間育った家を出る事になったのだ。
私は悲しくて、涙が出た。
けれど、ふと思ったのだ。
あれ?
悲しむ必要あった?
そもそも、愛されていたと感じたことなんて、なかった。
そこまで考えて、涙が勝手に引っ込んだ。
そんなことより、これからどうやって生きるか、考えないといけない。
幸い、切り詰めていけば、一年くらいは暮らせそうだ。
服も、少し綺麗な平民服で通せる。
前世を思い出さなければ、何から手をつけていいかわからなかっただろう。
その点は、前世に感謝した。
とりあえず、まずは明るいうちに宿を探そう。
私は、王都の平民街にある宿を目指して、歩き出した。




