14話
職業『作家』の新たな真実に気づき、愕然とした私を、子フェンリルが慰めてくれた。
すごく癒されました。
しばらくフェンリルと戯れ、フェンリルたちは自分の住処に帰っていた。
私も子フェンリルと、泣く泣く別れた。
またどこかで会えたらいいな。
私は保存食を食べ、また移動を開始した。
私の今いる場所は、かなり森の奥のようで、珍しいとか貴重とかいう植物がたくさん生えている。
取り過ぎないように気をつけつつ、見つかった先から採取している。
まだ日は高いが、そろそろ今夜の寝る場所を探そう。
『レヴォング王国幻獣の森』の地図のページを開き、良さげな洞窟を探す。
あれ?
なんか、地図に点が追加されている。
緑の点、赤い点、青い点、黒い点。
幻獣の森に入った時に、確認した時はこんな点はなかった。
位置的に、緑の点は私。
色からして、赤の点は敵かな。
青の点と黒の点は、なんだろうか。
現時点ではわからないので、また今度検証しよう。
良さげな洞窟を見つけたが、青い点がある。
……確かめてみる?
敵でないことを祈りつつ、私は洞窟に向かった。
緑の点が、私の動きに合わせて動いているので、私の点で間違いなさそうだ。
2時間ほど歩いて、洞窟に着いた。
入り口から中を覗くが、暗くて何も見えない。
リュックからランプを取り出して、灯を灯す。
手を伸ばして洞窟内を照らしてみるが、奥が深いのか、入り口付近しか見えない。
仕方がないので、ゆっくりと慎重に足を進めた。
奥に行くほど気温が下がっている。
下り坂のようで、少しずつ下に行っている感覚があった。
足元にはゴツゴツとした岩の間を、細く水が流れている。
何処からか、湧き出ているのだろうか。
奥の暗闇が動いたような気がして、足を止めた。
すぐに逃げられるように、半身を後ろに引く。
カツン カツン
何かが岩を踏みし得る音。
そして、奥からヌーッと現れたのは、鳥の翼と胴体に、牡鹿の頭と脚をもつペリュトン。
白銀の毛皮のペリュトンだった。
白、と言うことは、幻獣だ。
「えっと、こんにちは?」
「おや?神の愛し子かい?久しぶりに見たねえ。」
「あの、ここで一晩、過ごさせてもらえませんか?」
「ああ。愛し子なら構わないよ。こっちにおいで。湖があるところの方が明るい。」
「ありがとうございます。」
ペリュトンの案内で、さらに洞窟の奥に進む。
たどり着いたそこは、大きな湖があった。
天井は、何かで光っているらしく、ペリュトンが言うように、程よい明るさだった。
パシャン
「客か?ん?何だ、愛し子か。よく来たな。」
「ケートス…」
クジラの様な胴体に魚の様な下半身、複数の獣に似た頭部と、二つに割れている扇形の尾鰭を持つケートス。
もちろん、こちらも体色は白い色をしている。
「なぜ、ここにケートスが?」
「ここは深いところで海に繋がっているからな。行き来しているんだ。」
「へえー…。」
こんな短期間に、3種類もの幻獣に会ってしまった。
感動を通り越して、これが普通だと思ってしまいそうだ。
あの地図にあった青い点は、どうやら幻獣のことだったようだ。
ペリュトンのお腹を枕にしながら、贅沢な夜を過ごしたのだった。




