第四章 解き放たれぬ想いと決意
古塔の静寂を破るように、ジュリアは両手を掲げた。
「エレン、わたしたち、一緒にここから出よう!」
彼女の瞳は、溶けたルビーのように鮮烈に輝いていた。
「ずっとここに閉じこめられて、わたし……もう耐えられない。あなたとなら、どこへでも行けるって信じてるの」
エレンはその声に胸が締め付けられ、目を伏せた。
「ジュリア……俺には、守らなければならない使命がある。この塔を離れることは許されない」
だが、ジュリアは諦めなかった。彼女の指先から赤い魔力が迸り、古塔の石壁がひび割れていく。
「お願い……一緒に、外の世界に行こうよ」
轟音と共に塔の一部が崩れ落ちる。
エレンは咄嗟にジュリアを抱き止めながら、決意を固めた。
「俺はお前を傷つけたくない。でも、今はお前の願いを叶えることができない」
二人の間に切ない沈黙が流れた。
紅の魔女――ジュリアの時は止まったまま、
けれど彼女の心は動いている。
エレンはそっと言った。
「いつか、もしお前が自由になれる日が来たら、その時は……」
ジュリアは小さく頷き、幼い笑顔で答えた。
「その時まで、ずっと待ってる」
崩れゆく古塔の中で、二人の想いは交差しながらも、叶わぬ未来を静かに見つめていた。