第三章 揺れる心と孤独の影
日が傾き、古塔の窓から差し込む夕陽がジュリアの小さな影を長く伸ばしていた。
「ねえ、エレン……」
ジュリアはその瞳を細め、小さな声で言った。
「わたし、なんでずっとここにいるのかな? みんなわたしを怖がるの?」
エレンは少し間を置いてから答えた。
「お前は特別な力を持っている。それが故に、この場所にいるんだ」
ジュリアはその言葉を受け止めながらも、まだ幼い笑顔を崩さなかった。
「わたし、ただの子どもみたいに遊びたいだけなのに」
その言葉にエレンの胸は痛んだ。
彼女の純粋な願いと、この塔に閉じ込められた現実とのギャップ。
「ジュリア……」
彼は優しく彼女の肩に手を置いた。
「俺はお前を守るためにここにいる。だけど……」
言葉を濁したのは、幼い彼女に対する自分の複雑な感情を整理できなかったからだった。
ジュリアはそんなエレンの手を握り返し、はにかむように微笑んだ。
「エレン、好きだよ」
その一言に、エレンの心は激しく揺れた。
だが、彼女の見た目は幼く、誰もが子どもとしか思わないだろう。
それが二人の間に越えられない壁を作っていた。
夜の闇が二人を包み込み、言葉にはできない切なさが静かに流れた。