第二章 少しずつ近づく距離
エレンは古塔の中を歩きながら、ジュリアのことを思った。
彼女は外の世界から隔絶され、幼い姿のまま長い時を過ごしている。だが、その瞳の奥には大人びた影がちらつく。まるで何かを隠しているかのように。
「ジュリア……お前は本当はどんな人間なんだ?」
呟くと、ふと幼い声が耳に届いた。
「ねえ、エレン。お話してくれる? 何でもいいの」
振り向くと、赤い瞳をキラキラさせて見つめるジュリアがいた。
エレンは微笑んだ。
「お前のこと、もっと知りたいと思っている」
その言葉に、ジュリアは嬉しそうに笑った。
「わたし、遊ぶの大好き。でも、みんな大人ばっかりでつまんないの。だから、エレンと一緒にいたいの」
エレンは心が揺れるのを感じた。
こんなに幼くて無邪気な彼女に、なぜか守りたいと思う気持ちが生まれていた。
だが同時に、その幼い姿と裏腹に感じる不思議な魅力が、自分にとって何なのか戸惑いをもたらした。
夜が更け、二人は静かな時間を過ごした。
エレンは、ジュリアの言葉の隙間に見え隠れする孤独を感じ取った。
「彼女は自分の時が止まっていることに気づいていない……」
胸が締め付けられる思いと共に、エレンはこれからの日々が試練であることを覚悟した。