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大場の話1

 大場さんは昨年までは、先代と出掛けて九頭竜川の河川敷にシーマを駐めて、一緒に鮎釣りをしていた。先代が亡くなった今年は、個人事には先代の持ち物とはけじめを付けた。それにシーマだと先代を想い出してしまう。自転車で行くには荷物が多すぎて、タクシーを使うと言い出す。これには美紗和さんが久し振りに鮎が食べられる、と釣り場まで送り迎えをしてくれた。

 天気は申し分なく、相変わらず夏の太陽が九頭竜川に降り注ぎ、鮎が主食とする苔も食われても食われても順調に生育していた。まさに鮎釣りシーズン真っ盛りと大場さんは意気込んで、美紗和さんの運転する赤いコンパクトカーで出掛けた。

 着いたポイントは、此の前に美紗和さんと行った場所とは違うが、少し川幅が広くてその分、流れも緩やかだ。そこで美紗和さんが帰ると大場さんの手を煩わすことなく、おとりの鮎を付けて坂部は上流へ流した。その手際の良さに大場さんも安心しておとりの鮎を流した。流石に大場さんはゲットするのは早かった。たちまち一匹釣り上げてしまった。これだと今夜の夕食は一人三匹は食べられそうだが鮎を目当てに誘った訳ではない。色々と高村家の内情を知りたくて誘ったのだ。いきなり確信に入るのも如何どうかと、先ずは裕介について訊いてみた。大場さんは流れに乗せた竿を眼で追いながら語り出した。

「そうですね、裕介さんは弱い者を見ると庇ってやりたくなる人なんですけれど、虐めている相手によっては尻込みして見て見ぬ振りするところがありますね」

 当たっていると感心した。

「でも、そんなことをぼくに言って良いんですか」

「勿論相手にも因りますが、その点、坂部さんは聞いた内容を吟味して当事者にどう伝えるか考え込む人ですから、そうでしょう」

 とニンマリされた。こうしてお互いの気心が分かると、坂部はいよいよ美津枝さんと典子さん、此の二人に祖父の利恒さんがどう関与しているか聞いてみた。



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