美紗和の話5
坂部にこの複雑な環境は理解しにくい。
「何か風が吹けば桶屋が儲かるみたいに、おかしなこじつけになってないかしら」
美紗和さんは更にややこしい事を言い出した。
「それでも辻褄は合うでしょう。美紗和さんや家の人は身近に見ていて何とも思ってなくても、わたくしのように此の家に急に来て色んな人の話を付き合わして全体を俯瞰して見てみると、全てはおじいさんの手の中で事が進んでます」
「後から見ればそんな風になってるわね」
「成っているんでなく、あなたの祖父がそう仕向けたんです」
時代を考慮すればおじいちゃんはかなり悩まれた。最初は遺訓が絶対的で、一字でも曲げてはならんと心に固く誓って行動すれば、こんなにはならなかった気がする。
「あなたは生前の祖父を知らないからそんなことを平気で言えるけど、でもおじいちゃんはそれはそれは実に厳格で厳しいかったのよ。そのおじいちゃんが優柔不断だったと云うの」
「問題はそこです。美津枝さんは再婚しない、となればお兄さんとの約束が頭にチラつく。典子さんをどうしたものかと思い詰めれば自分の孫でもない人をそこまで束縛するよりは孫の克之さんにと思った。そこでありもしないお兄さんの亡霊を勝手に作ったりするからですよ」
「典子さんが自由か不自由か、でどうしてそんなに話が拗れてくるのよ」
「美紗和さんは高村がどう謂う男かよく知っているでしょう。彼奴はそんなおじいさんを見て育ったから人の不幸には敏感なんです」
大学では取っ付きやすくしているようだが、本音は人の嫌がることは押し付けない。そんな奴が坂部に家の内情を知らせたくて誘ったのだ。坂部も最初はそこまで考えてなかった。駅に着いて大場さんが年代もんのシーマで迎えに来て、少しずつ変な気がしてきた。家に着いて数日でハッキリと可怪しいと認識して色々と考えた。




