表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/58

坂部の話3

 もとの原価はただでも、金持ちの息子には十万で売り付けているから「あなたは良い買い物をしたと思わないとバチが当たる」と言われてしまった。しかしそんな細面ほそおもての能面のような古風な顔立ちをした佳乃子ちゃんは、普通の女の子より活発で誰にも愛想良く振る舞うから、その手のかわい子ちゃんの部類に入るのだろう。

「だからそんな彼女が急に雨宿りに来たんだよ」

「ただの壺を五千円も吹っかけられてよく部屋に入れてやるよなあ」

「余り降ってなくてもお前の事で雨宿りを口実に、若い女が相談に来れば断り切れないだろう」

 これには高村も悪い気がしなくて苦笑いしている。

「何故、俺のことを知ってるんだ」

 だから最初に言ったように俺も彼女に問い質した。

「どうやらその陶芸教室に福井から来てる小石川希実こいしかわきみと云う女の子が高村を見知っていて、それを佳乃子が聞きつけて俺のアパートへ押し掛けて来たんだ。それで高村、お前は地元では有力者の息子として知られているそうだなあ」

「おやじは派手に事業をしてるから山あいの田舎では目立つんだ。でもそんな田舎から京都の大学へ来ている女学生が居るとは知らなかったなあ」

 そんな地元の名士なら佳乃子ちゃんは直ぐに嗅ぎつけるだろう。それを云うとあたしは犬じゃないわよと一蹴された。

「いつも愛想の良い八方美人の佳乃子ちゃんに初めてそんな風に言われりゃこっちは八方塞がりになっちゃって、そんなに邪険にされればいつもの美人が台無しだよ」

 と言うと彼女は急にお淑やかになって「そう言われたのはあなたが初めてね」と言うから「裕介にもあの壺を売るつもりか」と言ってやると彼女は「そんなええとこの子のボンボンなら壺よりあたし自身を売り付けてやる」

 と息巻いているから気をつけろ。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ