九頭竜川の鮎釣り2
それじゃ物事に対して感動しなくなり、無機質な人になると言われ、おじいちゃんは会社経営で展望がなければ、こうして九頭竜川で無心で鮎釣りをした。
「それは大場さんも同じなのよ」
「でもあの人は毎日気分転換を図る必要はないでしょう」
「アッ、あなたの鮎は流されてるわよ」
どうやらもう此奴はギブアップのようだ。
「こんな場合はどうするんだ」
「釣ったばかりの元気な鮎に取り替えて上げるのだけれど」
おとりは大概二匹有れば、あとは次々と取れた元気な鮎に取り替えて、増やしてゆくらしい。だがまだ一匹も釣れてない。それでも鮎を疲れさせないように泳がすコツさえ掴めば、大場さんの手を煩わす必要がない。それでおじいさんの話を聞ける。
「大体岩場に付いた苔を囓り取るから、それらしい石の処へ常に泳がしていれば大場さんも気にしないから話し相手になるわよ、で何を訊くの」
「矢っ張り伯母さんをどうしてあれだけ気に掛けていたのか、そしてその娘さんの典子さんも気になるなあ」
それで今朝出掛けに見付けて、典子さんに声を掛けようとした。
「だいたい典子さんは家事以外は奥の部屋にいるんですか」
「台所の隣に休憩室が有るからそこにいるわよ」
「今朝はいつもああして池の鯉に餌をやってるんですか」
「おじいちゃんが良く会社へ出掛ける前にやってて、たまには大場さんもやってたのよ。それを今は彼女がやってるの」
「じゃあ大場さんも鯉に餌をやる事もあるんですか」
「あの人は運転する集中力を、ああしてほぐす意味合いが強いみたい」
車の運転が取り立ての坂部さんは、いつも緊張の連続だ。大場さんのように馴れると暇な時間につまらないことをやりたくなるらしい。あたしの友だちは猫じゃらしで飼い猫と戯れてる。と言って坂部の持つ竿に手を添えて、糸をたぐり寄せた。




