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祖父の臨終1

 坂部は夕食を終えて部屋へ戻り、気になるのは食卓に裕介が居ないことだ。今日は帰りが遅くなるから外で食べると千里さんに連絡したのは、帰郷して初めてだ。帰郷して毎日坂部は高村と出掛け、ここ最近控えたのは、美紗和さんと出掛けるように差し向けている、と千里さんは言ってる。それにしても夕食まで控えることはないだろう、と部屋に戻って、旅館のように何もない部屋では本を読むしかない。冷蔵庫はあるが酒類は入ってない。まだ未成年と言ってもあと半年の禁酒なんて無意味な気がする。それを察して、美紗和さんが缶酎ハイをこっそり持ってやって来る。しかも五百ミリリットルのロング缶を三つも持ってきた。

二つを冷蔵庫に入れ、座卓にコップを二つ用意して注いでくれた。坂部もさっき千里さんと一緒に買い物した乾物を取り出した。

 今日は一日中そう広くない大野市内の山すそを走り、釣り道具は大場さんから借りれば良いと美紗和さんは釣りのポイントを探してくれた。釣りに詳しい大場さんとは、来た初日は一日観光に付き合ってくれても、高村社長の送迎運転手としては親族でない坂部はそうは行かないが釣りなら別だ。九頭竜川で鮎釣りをする大場さんの足手まといにならないように上手くなりたい。小さいときにおじいちゃんに少しは教えもらった彼女が、大場さんの次の休みまで、釣りに付き合って特訓してくれる。

「美紗和さんは鮎釣りは上手なんですか」

「下手ッ、だからおとりの鮎が直ぐにダメになってしまうの。だから釣りに行ってるのか放流に行ってるのか解らんっておじいちゃんによく言われて、中学生になったらもう止めてしまったの。その程度だけど、まあカッコだけは付くから大場さんを煩わすことはないわよ」

 カッコだけ付ければ、釣れなくても話し相手にはなれると言われた。其れもそうだ。大場さんを誘うのは釣りが目的じゃない。美紗和さんの言い分は当を得ていた。



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