祖母の話6
義祖母の後ろ姿が消えると千里は茶道具を片付けだした。
「本当のお目当ては美紗和さんでしょう」
と言われてしまった。
「それはないです」
と慌てて否定すれば、協力するわよと千里さんは意味ありげに嗤った。
「あの人はサッパリした人だから余りネチネチすると嫌われるわよ」
とまで告げられると処置なしだ。
そう言えば今日は赤のコンパクトカーは、バックでなくそのままあの石畳の道から林の中へ頭から突っ込んでいた。
「あれじゃあ出るときが面倒だなあ」
「行きは元気に出られるけれど帰りは疲れて帰って来るからこれでいいのよ」
と千里さんは、問題は車の向きでなく運転するときの気分だそうだ。
「でも大場さんはいつもきっちりと止めてる」
「あの人はそれが仕事だけれど、美紗和さんはそうじゃないでしょう。人は目的に応じて生きている。あなたも裕介さんに肩入れするのも程々に、彼はそれほどあなたを重宝してないわよ」
「どうして」
「此の春から大学行きだして大きく環境を変えたからかしら」
こうして大学生活を始めて、特にあなたを知ってから家は普通じゃないと姉に言っていた。
「それを知ってる千里さんは、美紗和さんとは筒抜けなのに、彼奴はそれを知ってるのだろうか。なんせ大学ではお姉さんの話ばかりしていたからなあ」
「それに釣られて来たの? それとも今時珍しく古風な仕来りに囚われる家に興味があったの?」
「千里さんは後者の方でしょう」
彼女はエッと驚いたが、克之さんより遺訓に拘る義祖父に興味を持ったのがその証拠、と言ってみたら、ウフフと奇妙な笑顔を浮かべると、典子さんの夕食を手伝わなくっちゃとサッサとキッチンに行ってしまった。




