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祖母の話1

 喫茶店を出て車で走ると広くない町でも自然は豊かだ。この時期になると九頭竜川の恩恵を受け稲穂はすくすく育ってもう直ぐ稲は開花する。

 車内の話題に取っ付きやすいのは大場さんでも、肝心要の情報源はおばあちゃんだ。おじいちゃんが最後に眼を掛けていたのは典子さんだ。子供が動き回れるようになって大変で、隣の千里さんの子供は三歳にしては大人びて利貞ちゃんも、もの心がつき始める年頃で扱いにくい。

 直ぐに町中から山すそに有る我が家に着く。千里さんは夕食の買い物に近くのスーパーで降り、坂部も付き合って歩き出し、千里さんに真っ先に茶室での茶会の様子を聞いた。人数は十人前後だけど五人ぐらいの時も有るそうだ。それでも欠かさず来ているのが会社や役所の幹部の奥さん達で、もっぱら井戸端会議に近い情報交換の場らしい。

「男性は来ないんですか」

「殿方は会社や役所で毎日顔を合わしているし、それ以外で会うとすればお茶会より料亭の呑み会の方がいいんでしょう」

 なるほどそうか、どっちにしても新参の坂部の出る幕じゃないか、だとすれば直接祖母に茶道の教えを請うしかない。

「そうね、あたしから頼めばお相手してもらえるでしょう。でも気が合わなければ次からは断られるわよ」

 食事会で拝見して視線を合わせただけで印象は解りづらい。

「そうか、亡くなった祖父、利恒さんの権利は誰が引き継いでるんです」

「会社は義父の利忠ですけれど、家はおばあちゃんでしょうか、それとも共同名義かその辺でしょうね」

「遺言はないですか。たとえば利貞ちゃんをどうするかと言う……」

「それは遺訓に添って祖母と利忠で相談しろって書いてあるだけ」

「えらい曖昧なんですね」

「あの時はまだ生まれたばかりです。でも子供って大きくなるのが早いですから」

 と言いかけてスーパーの入り口で籠を取って買い物を始めた。



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