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大野市内3

「おっしゃる通り、あたしは嫁に出ると、ずっと此の家に残って支えてくれるのは千里さんですもの、祖父が色んな思いを託したとしても不思議ではないでしょう」

 これには坂部も胸にジーンと期すものがあった。

「でも裕介は美紗和さんに色々と訊けば良いだろうって言ってたけれど」

 これも裕介の配慮と受け取っていいだろう。

「多分それだけ長いからよ。千里さんは五年ぐらいだけれど、あたしとは二十年以上も同じ屋根の下で暮らしてそう思ったんでしょう」

 さっき言ったように、一緒に居た年月で無く、此の家に必要な事をいかに伝えるのなら、あたしより千里さんの方が良い。ひょっとして大場さんよりまだ若い彼女の方が大事な家の方針を伝えたかったのではないかと美紗和さんは思っている。

「だからその兆候はなかったのかしら」

「此の家に来てまだ三年ほどでは、おじいさんは幾らご自分で選んだ嫁とは謂えども何を何処まで伝えるかは暫くは様子見が必要でしょう」

「だろうなあ。高村の奴はいったいどんな眼をしてるんだ。今日は何処へ行ったんだ」

「高校時代の友達が会わせたい人が居るって言われてノコノコ出て行ったようよ」

「そんな友達がまだ居るのか」

「さあ、あたしも今まで知らなかった」

「暢気な奴だなあ。そんなファンがいたなんて、きっと今頃は高校時代の想い出に花を咲かせているんだろう」

「大袈裟ね、半年前のことなのに」

「でも彼奴には三年間の総決算したあとだから再会が嬉しいんだろう」

「何の総決算かしら」

「そりゃあ、地元を離れて始めて達した境地ですから、色んな思いが交差したんでしょう」

「この街であの子にそんな友達が居ただろうか」

 美紗和さんは掻き上げた髪の毛を振り下ろしてなびかせた。


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