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越前大野城3

 天空の城は標高二百五十メートルほどの山上にある。ここに連れ出したのは、坂部の体力評価のためらしい。とにかく赤いコンパクトカーで数キロ先にある大野城に向かい、南側に有る搦め手門の駐車場に止めた。この車もシーマ同様にヘッドライトは丸みを帯びていた。彼女に聞くと祖父は、最近の車が猛獣の眼のように前照灯がギラついてるのが気に入らないようだ。彼女も祖父に倣ったのか、それとも古風な家柄のせいか、今乗ってる車も、この町に合って福井市内でも気にならない。

 搦め手門を潜るとずっと天守まで上り勾配が続く。渓流の沢登りに比べると整備された楽な道だが、流石は山城だけあって道は曲がりくねって勾配がきつかった。

「昔の者は刀を下げて此処を毎日登ったんですね」

「そう、お殿様もお年寄りもだからどうって事ないでしょう」

 自転車で毎日買い物に行く千里さんには大した道ではないようだ。

「お殿様もですから」

 と更に美紗和さんに強調された。

「武家屋敷がもっと北の方で、多分そこから登ったのでしょう」

「そっちもきついのですか」

「此処は搦め手ですから、北の方が傾斜は緩くて登りやすいけれどそれでは練習にならいでしょう」

 と女二人ともさっさと登って行くと処をみると、相当に祖父から鍛えられたようだ。二重三階の天守の中は資料館になっていた。一気に四階の展望台まで上がった。天守からは市内が一望できた。遅れて到着した坂部を二人は冷ややかな目で見られた。

「大学では何をしているのですか」

 体力のなさを批判するように千里に言われた。

「勉強」

「何を言ってるんですッ。それ以外で運動はやらないんですかッ」

 少々呆れ気味に突っ込まれた。

「千里さんは手厳しいですよ。もっともお客さんには別ですけれどね」

「まあッ、美紗和さんは辛辣しんらつな方ですから気をつけた方が良いわよ」

 と二人から冗談半分に体力のなさを揶揄からかわれてしまった。


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