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越前大野城1

 裕介からはたいした説明のないまま家に誘われた。それは坂部も気にしてない。お前に似合う姉が居る、その一言に心を奪われて、あとはどうでもよかった。来てみればそうはいかなかった。

 当家は廃藩置県後の高村家当主が勝手に格式と権威づけをした。何も持ってない人がやることで、生まれながらに備わっていれば、そんなものに拘らなくても良い。無い物ねだりで格式だけは立派にしたご先祖が、名実ともに高祖父から藩主の名前を付け出した。それを祖父が廃止したいのか続けたいのか、定かにしないまま突然ばったり亡くなり、残された者が右往左往している。裕介は門外の坂部さんに名案を引き出すために当家へ招き入れたと美紗和さんは思っている。

「そうでしょう、違いますか」

「裕介の奴は見て決めろと謂わんばかりに、何の説明も無かったんですよ」

「人任せなところがあの子らしいわねぇ、それで最初は大場さんに頼ったけど肝心なところは聞かせてもらえなかったって裕介が言ってたけれど、それは最初から分かり切ってるでしょう」

「だから彼奴は俺を誘ったんだ。それで大場さんと二人きりになる方法がないだろうか」

「あるわよ」

 大場さんは魚釣りが好きだ。坂部さん、釣りはどうかしらと言われた。彼はどうも釣りは苦手なようだ。そこで手を替え、大場さんは諦めて、おばあちゃんか伯母さんに近付く方法を訊いた。裏千家や表千家のなどのお茶に関心があるかと訊かれ、これは釣りより難しい。じゃあ習えば良い、茶道も釣りもあたしが基礎を教えて上げましょう。

「ハア? 美紗和さんが?」

「別に不思議は無いでしょう。弟子もいますから」

 どうやら小さい時から仕込まれたようだ。他に武者小路千家があるが、たしなみなら知らなくて良い。今はそんな難しい話は別にして、習うとすれば釣りの方が楽だ。魚が掛かるのを気長に待てば良い。大場さんは鮎の友釣りなので、あたしもそれは無理だが、格好だけは付けられると言い切られた。



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