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名付け親論争3

 女性らしくない物言いだけど、それだけ祖父の考えがこの家には浸透しているのか。

「しかし、それってもっとややこしくなると思いませんか」

「でもおじいちゃんは、自分の寿命をキチッと計算に入れとけば、こんなことは起こら無いでしょう」

「あのー、差し出がましいようですが、いつ死ぬかは本人も解らんでしょう」

「でも健康に留意するとか、あるでしょう。そうなると針の筵のお兄さんは知ってるのかしら」

 食事会で拝見したが、お兄さんはそんな雰囲気ではなかったようだが。

「でも仮におじいさん以外の人が名付け親ならどうします。一番濃厚なのは美津枝伯母さん辺りでしょう。そうなると本当におじいさんは脳溢血で倒れたんですか」

 この家の事情に疎い者としては勘ぐりたくなる。

「でも美津枝さんにしても、お兄さんに男の子が生まれなければその利貞ちゃんが跡を継ぐでしょう。坂部さん、他人事だと思って我が家を掻き回さないで下さい。でもこの下の茶室で次の茶会は九月九日の重陽の節句に行われるんですけれど……」

「それがどうかしたんですか」

「結構名士の奥様方がいつも見えているの。そこであの利貞ちゃんをお披露目すればおじいちゃんの意向が自然と行き渡るわね」

「それをするのは美津枝さんか」

「主宰はおばあちゃんだけど、取り仕切っているのは美津枝伯母さん」

 もしも、伯母さんが家出をした原因がこれに絡んでいればどう出るだろう。

「伯母さんは段取りをするだけで、社交界で茶道を心得ているのはおばあちゃんだけか」

「純粋に茶道だけの集まりであればね。でもこの業界に於ける情報収集の一環で名前を連ねている人も居るから、利貞と云う名前だけが独り歩きして、色んな思惑が交差するのも事実でしょう」

 あの茶室に集う人々の品格に左右されるのか。重陽の節句にはまだひと月以上はあるが、大学の授業が始まるのはもう少しあとだ。それまでに何が判るのだろう。


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