名付け親論争2
「そうなのか、じゃあ典子さん以外ではおじいさんと美津枝さんぐらいは知ってるだろうなあ」
「それ以外の人は知らなかったって言うの、じゃあ坂部さんはその話を誰から聞いたの」
「ウン、大場さんから」
「なるほど、あの人は古狸だから、おじいちゃんのやってることは、大概は知っているでしょうね」
「それで美紗和さんは、此の家の長男は歴代の藩主の名前を付けていたのは分かるよね」
「最初は何なのー、と古くさい名前だけど、それがお父さんだけでなく他の人も似たような名前なので、変なのって思ったけど、流石に中学になると嗚呼そう言う事かと思った。でもあたしの兄弟は違うからもうやめたのかと思ったけれど」
「残念でした。それがまた復活してるんですよ」
「エッまさか、誰? 最近生まれた男の子は典子さんのあの子だ。あの子はいつも離れに居て馴染みがなくて、僕ちゃんで通しているからその子が、まさかのそれなの」
「うん、しかも途切れていた四代目の利貞の名前を付けられていたんだ」
坂部にすれば食事会で、初めて美津枝さんの隣の幼児用椅子に畏まって座る男の子を見た。あの時は小さすぎる子供にしては姿勢が良いなあと感心した。だが四代目に当たる利貞として、既に躾されていたのだ。遊び盛りの子供なのに可哀想過ぎた。丁度向かいに居る千里さんの子供は、女の子にしてはやたら活発そうに見えたからだ。
「誰が付けたのッ、それじゃあ典子さんじゃないのは確かだけど、此の前亡くなったおじいちゃんなら余計な事をしてくれたわね」
「おじいさんもそんなに早く死ぬとは思ってない。まあ十年以内に男の子が出来なければみんなを諦めさせて克之さんをワンポイントリリーフにして、じっくりと周りを説得して行くつもりとしか思いつかないけれど、美紗和さんにはそれ以外の考えは有るの?」
「う〜ん、それが一番濃厚だけど。取り敢えずは千里さんに頑張って男子誕生を待つしかないか」




