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新学期3

 その時は、おう、逆ナンパか凄い大学へ入ったもんだなあ、と半ば浮かれていると突然チラシを渡された。ハア? と浮かぬ顔をしていると、しめたと相手に思われたのか、機関銃のような言葉で説明を浴びて、訳の分からぬままに入部させられた。しかしこの二ヶ月でこのサークルの特異性が見えて来た。それは何だと謎掛けをしたが、鼻の下を伸ばして入ったサークルなんか知るわけないだろうと一蹴された。

「そうは云ってもこの大学では、今はお前以外に誰も知らないんだ。そこへ可愛い女の子が寄って来れば理由の如何いかんに関わらず先ずは話に乗ってやるだろう」

 坂部の場合はあれほどの猛勉強の反動から入学できれば肩の荷が降り、学業以外に関心して入ったと想像が付いた。それでもサークルの女に、福を招く猫ならず幸運が現れるという変な壺を売りに来たが、金が無いと云うと置いて行った。そのヘンテコな壺はあの古いアパートには良く馴染んでいる。しかし梅雨に入ると狭い入り口の半畳にも満たない三和土たたきが雨の強い日は水浸しになる。見かねてあの壺を丈は短いが、傘立て代わりにして、案外役に立つと気にならなくなった。そこで高村は最近見掛けたあの壺には、そんな経緯いきさつが有ったのかと笑われてしまった。

「お前があんな壺を、まして傘立ての代用でも買うわけないが、置いて行った相手はどんな女だ」

「人聞きの悪いことを言うな」

 と坂部は言動とは裏腹に、にやけた顔になった

「入学式が終わってあれほど盛んに新入生の勧誘をやっていたと云うのに、なんだお前はまだ色んな部活に出会ったことがないのか」

 大学生活が始まったと言うのに高村は講義にしか興味はなく、授業時間以外は校内をたむろしない。ましてそんなサークル活動の勧誘にまで物見遊山で行ったりはしない。それを言うと逆に何しに大学に来たんだと一喝される。勿論そこには学費を無駄にするなという高村の親心から来て胸に堪えた。


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