乗り切れない話3
「亡くなったおじいさんとは随分長いんですね」
「四十年近く側に居ますから」
「じゃあもう、おじいさんは何を望んでいたかは訊くまでもなく隅々まで分かってるんですよね」
「そりゃあもう」
「おじいさんのお兄さんは、人を使う仕事は性に合わなかったのですね」
「まあ実質は先代が切り盛りしてましたから、よく福井とあの会社へは通いましたよ」
先代のお父さんには何度か意見したが、一度決めたことは中々直さない人だから、先代もその板挟みで苦労したらしい。
「それでお兄さんが亡くなるときは美津枝さんは帰ってこられたんですか」
「いや帰ってこなかった。連絡が付かなかったんですよ。住み込みで働いていて、それでお父さんの告別式を知って帰ってきたんですよ。でも直ぐに又出て行ってから今度は典子さんを連れて途方に暮れていたところを、知人の連絡を受けて先代が引き取ったんです」
「その時、美津枝さんはどうしてたんです」
「離婚してどうしょうもなく、昔住み込みで働いていた家を訪ねたところ、家の人が先代に連絡してそれで迎えに行って、こんな小さい子を抱えてどうするんだと言って引き取ったんですよ」
「高村、憶えているか?」
「知るわけないだろう。俺が生まれたときには、もう伯母さんとのりちゃんが居たんだから」
「なるほどそうか、それで離婚した相手はどうなったんですか」
「さあそれは、美津枝さんに聞いて下さい」
「でもおじいさんは知っていたんでしょう。だったら少しは聞いているでしょう」
大場さんはルームミラでチラッと裕介を見て口を濁した。どうも高村が居ると大場さんは話しにくそうだと思った。高村も聞こえない振りをして車窓の流れを追っていた。




