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乗り切れない話1

 佐知の居たデパートをあとにして再びシーマは福井市内を走り出した。先代のおじいさんが我が家の運転手として雇っただけあって、大場さんはある程度は裕介の魂胆を見抜いているのだろう。車の後部座席で二人はそんな風に考えた。

「あんまり難しく考えないで下さい。佐知さんと千里さんの違いはデパートへやって来るお客さんに対して作り笑顔になるか自然と笑顔が湧いてくるか、ただそれだけの違いなんですから」

「でも、それは持って生まれたものですから、その違いは大きいですよ」

 坂部は裕介から聞かされた千里さんの経歴を思い返してみた。

 千里の結婚前の戸籍を見ても、特に気を惹くものはなかった。本人を見ると祖父の眼中にはその人しかない、何かがあったのだろう。さっき会った佐知さんは新鮮過ぎて取っ掛かりがないから、祖父には面白みが欠けたのだろうか。何もかもが新鮮に見えた裕介には少し違っていた。佐知と千里では話の乗りが違う。場違いな言葉に直ぐに息切れする佐知と、とことん乗って来る千里に、祖父の方がネタ切れしていたのを裕介は垣間見ていたからだ。

「どうも佐知とはそこが違うんだなあ」

 と坂部に云って、そうでしょうと大場さんに同意を求めた。そうですね先代の言ったことに対して、千里さんには言葉の綾って云うか、巧みな言い回しをされました。

「先代は却ってそれを期待していますから、新婚の克之さんにすれば迷惑この上もなかったのです」

 此の二人の遣り取りに、坂部は千里さんってそんな人だっけ、と腑に落ちない顔をした。

「坂部、姉貴とは喋ってもお前、まだせんりとは取り次ぎだけでそんなに喋ってないだろう」

「裕介さん、せんりはないですよ。あれで千里さんは気にしてますよ」

「まあナ、最近はそうは呼んでないよ。それより坂部は姉貴より千里にはとんでもない事を云ってみれば面白いぞ」

「裕介さん、まだ着いた翌日では向こうも警戒されますよ、それより福井に来れば矢張り観光の目玉は東尋坊でしょう。裕介さんはともかく坂部さんはどうですか」

 と勧めてくれた。



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