祖父への最初の関門3
あの二人の違いは見たとおり、矢張り細かい所に長短があって、一目見ても決めにくいが祖父は短期間で決めた。こうしてじっくり観察したが、千里さんとは昨日会ったばかりの坂部と、数年前から会っている高村とはイメージに少し違いがある。
大場さんも佐知をよく知っていた。祖父と一緒に此処へ品定めに引っ張り出された。
あの洋服売り場でお客さんに商品を説明している佐知と、その横に立っている千里と比べられた。横に立ってる子でしょうね、と答えるとその訳を聞かれた。
「あの子は横でじっと立ってるだけでも良い雰囲気をしてますよ。あの子ならお客さんは服を見る振りをして寄ってくるでしょうね」
「そんなオーラーがあるか」
と戦前生まれの先代には似合わない言い方をされましたよ。
「何故いいんだ」
「あの子の笑顔は作りもんじゃないですよ」
「もう一人の子もそんな気がするがなあ」
とカマかけられて、
「いやあー、慣れでしょう、でもこっちの子は自然と身に付いているような気がしますから」
と云ったら矢っ張りわしもそう思うと云われました。あとはもう独断専行で、回数を重ねて、とうとう食事に誘えるところまでこじつけると、次にはもう克之さんを紹介してましたよ。
千里さんは一流ホテルのディナーに誘われて、ルンルン気分で会場に入ると、ウェイターから招待された席で、祖父と同席した孫の克之さんと付き合うように紹介されて、ハァ〜となって、最初はびっくりしたそうだ。
あの時の千里さんは呆気に取られても、直ぐに気を取り直すと、祖父にはちょっとユーモアの効いた小言を浴びせた。回りくどいやり方ね、将を射るのに乗ってる馬が名馬ならどうするんです。これには祖父も参ってしまったようだ。
「佐知さんもけしてあたしは悪くないと思いますが、いや、むしろ真面な佐知さんよりは千里さんが持っている意外性と雰囲気が先代には心に響いた」
先代が二人を見極めた時に、心に響いたものは何だと思いますか、と最初の関門を逆に投げつけられた。




