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祖父への最初の関門1

 朝倉遺跡から福井市内までは十キロも離れていない。ゆっくり走っても車なら二十分もあれば着いてしまう。まして三十年以上前の高級車のシーマは飛ばす車じゃない。こんな車はもうほとんど都会でも見ないし福井でも走っていない。三十年もすれば大卒の初任給は三倍になっている。三十年前はバブル期で飛ぶように売れた当時七百万のシーマも今じゃあ当然二千万を超える計算になった。今それぐらい出せば凄い機能の付いた高級車があるのに高村家では此の車に拘っていた。

 此の車同様に高村家には身内を擁護する拘りがあった。特に亡くなった祖父にはその傾向が強かったと祖母は父の利忠に言って聞かせていた。当然、祖父に可愛がってもらった裕介は、そんな祖父の別な一面は何も知らない。息子の裕介には父も話さず、幼い頃の祖母からの子守歌代わりにしか残っていない。その微かな記憶を頼りに車内で裕介は坂部に喋っている。本当は彼でなく運転手に間接的に云っているのだ。これで大場さんが割り込んでくればしめたものだが、とうとう福井市内に入っても話には乗ってこなかった。

「裕介さん、福井ですが先ずは何処へ行きますか」

「そうだなあー、おじいちゃんが見初みそめたその千里が居たデパートへ坂部を案内したいがいいか」

 高村は家族について、坂部には包み隠さず耳に入れて置くことにした。

「坂部さんは関心あるんですか」

 と大場が訊いて来た。 

「まあねぇ、これから暫く居ますから知っておけば千里さんとも話が弾むでしょう」

 と此の時には高村の魂胆が解りきった。そこから更に大場さんが話に深入りしてくれればと、二人はあの手この手と策略を練ってこれはその手始めだ。

「そうですね、千里さんは中々面白みのある人ですから話の取っ掛かりにはいいでしょうね」



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