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朝倉遺跡3

 そうか、下で優雅に珈琲を飲む大場さんも、ひょっとしたら厳しい環境の中で育って来たのかも知れない、とふと目の前の展示物を見た。そこにはミニチュアのように質素な町並みの展示と、さっきの朝倉家の豪華な館を見比べた。

 瓦屋根の館の中央には花壇があり、鮮やかな花を愛でていたのに比べて、町民の板葺きの屋根にはめくれないように重し代わりに無数の石が乗せてあった。時代こそ違えども身につまされる庶民の光景だ。

「大場さんは生まれはどこなんだ」

「飛騨地方で、それも出稼ぎに行くしか生計が立たない奥飛騨で、そこはひっそりとした温泉街で旅館業しかなく、耕す田畑も少ない。食い扶持を減らすために福井へ出て来て、運送屋で働いていたところを、祖父が我が家へ住み込みのお抱え運転手として雇った。大場さんは、かなりまめな人で送迎が終わって、手空きになると庭の手入れを始めて、今では庭師か運転手か分からないぐらい丹精にあの庭を育てているんだ」

 車の手入れをするうちに、あの庭も同じように気になったんだろう。

「じゃあ、大場さんもおじいさんには世話になってるんだなあ」

「ああ、祖父は人を見る目と女にはまめだったんだ」

 高村からそんな大場さんの話を聞いてから、一階の総合案内で会うと同情心じゃないが、さっきより親しみが増してまた印象が深まった。

 三人は遺跡博物館を出ると、建物こそ少ないが現場で実際に再現された場所へ行った。朝倉の館跡と区画整理された武家屋敷や、町並みの一部が復元された跡を、散策するように見て回った。

「ここら一帯は信長の焼き討ちに遭って、暫くはずっと何もない空間で全部田畑だったんですよ、だから綺麗にそのまま土の下に眠っていたのを掘り起こして再現しましたから電柱一本もない、本当にあの当時の物以外は何も此処には存在しませんから」

 と大場さんは発掘現場に向かって両腕を広げて披露する後ろ姿は、再現された夢の跡に向かって虚しく何かを心の中で叫んでいるようだ。


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