朝倉遺跡2
「それでおじいちゃんが跡を継いだのか」
「そうだ。おじさんの娘の美津枝さんは病死したお母さんの事で確執があってそれが家出の原因らしい」
「美津枝さんは幾つだったんだ」
「おやじとは二つか三つ違いだから中学生か高校生で十五、六歳だった」
「じゃあ高村が生まれるずっと前で、お父さんもその歳なら何となくしか解らんだろ。矢っ張り傍でつぶさに視ていた大場さんしか知らないだろうなあ」
「ああ、大場さんはその時はもう二十代半ばだから大凡の見当は付けられるだろうが、多分祖父は誤解のないようにある程度は大場さんにだけは話したと思う」
どうやら高村は、長年大場さんに接して、そんな感触を掴んだ。それが当家にお世話になっている大場さんにすれば、揉め事の種は自ら蒔く訳がない。そこへ行くと当家とは全く関係のない、しかも地元と縁もゆかりもない坂部なら、大場さんが長年溜めていた鬱積を、ふと漏らしても不思議ではないと高村は推測した。おそらくそれが今度の帰郷に当たって高村が、どうしても坂部を実家に呼びたかった最大の理由かも知れない。
「それで俺にどうして欲しいんだ」
「まあまだひと月あるからゆっくりと大場さんに接して懐柔するのに越したことはないが、どうや坂部にはそう難しい人でもないやろ」
「だいたいあの人の気心が解ってきた。あの人は煩わしいのが嫌なんや」
「やっばり毛並みが違うのやろうなあ」
これに坂部はハア? とおかしな顔をした。そこで大場さんはお前と同じ苦労人やと言われた。話では貧乏人の子だくさんで、坂部で同じように高校生でバイトに明け暮れて、十八歳になる前から教習所通いして、ギリギリの十八で免許を取った苦労人だ。
「多分そう謂う処も似てるさかいなあ」
「それって、高村が大場さんに俺のことを耳に入れたん?」
「そうや、大場さんは普通免許があれば体力が落ちても何とか喰っていけるちゅうってなあ」




