新学期2
住まいは近く、用があれば頻繁に行き来できるが、生活習慣の違いから余り顔を合わさなかった。数科目を除いて授業科目もほとんど別々なので唯一顔を合わせるのが昼の学食だった。
坂部はいつも本日のランチメニューで、高村は一ランク上の物を食べていた。しかし特にこれを問題視する事もなく、食卓で会えば和気藹々と語り合っていた。不思議とこの二人は云いたいことは言うが、そこに悪意も軽蔑もなく、お互いにわきまえていた。普通ならここまで辿り着くにはもっと多くの信頼関係を築く時間が二人には必要なかった。強いて言うならば出会った時に築かれて、それが二人には特異な出来事でもなくごく自然に普通に出来上がった。
大学生活に漸く慣れた頃に坂部は有るサークルに入り、今日はそれが話題になった。
「何だそのサークルは」
此の学食で高村は高級の部類に入り、皿からはみ出しそうな厚い牛ステーキをナイフとフォークで切り分けて、それからおもむろに箸を使って食べ出した。それを観察しながら坂部は「俺も良く解らん」と云って不純な入部動機を説明した。
その前に坂部が入ったサークルは部員集めなのか、大体わけの分からない超自然現象研究会とか云う、おかしな名前が付いていた。何だそれはと言われたが、入部した本人も本当の処はまだ解らない。ただチラシを持ってサークルへの勧誘を勧める和久井佳乃子ちゃんに一目惚れしたのだ。今のところ二ヶ月前に此のかわいこちゃんに呼び止められたと云うから入学早々で「学んだのはそれだけか」と裕介に言われてまあ早い話がそうらしい。