観光に出る3
長男が早く亡くなり、次男の祖父が跡を継いだが、息子の利忠に任してから祖父は福井によく出かけた。
福井市内のあるデパートに立ち寄った時に、客あしらいが実に上手な若い女定員を気に入り、それで口説き落としたそうだ。
越前の山あいの田舎では、特に高村家ではそうなのかと驚いた。ハンドルを持つ大場さんは至って冷静で穏やかに運転している。
「まさかおじいちゃんが、ええ歳してそれはないでしょう」
「七十の古希ですからそれは無いですけれど、先代は女の人にはまめな人でしたからね」
「それでそのデパートの店員さんはどうしたんですか」
大場は笑いながら、その人が今の克之さんの奥さんだと暴露した。
「千里さんですか」
「そうです、先代も三十年若ければ別な事を考えたでしょうね」
その頃は頻繁にこの道をよく走ったそうだ。
「でも二十年以上前にも伯母さんを引き取ってるんでしょう。あれはどうなんですか、亡くなったおじいちゃんのお兄さんへの配慮ですかね」
「その辺のことは勘弁して下さい。それよりもう直ぐ福井に出ますがその手前に少し入った所に朝倉の居城だった一乗谷城下がありますが、寄り道して坂部さんをご案内されればどうでしょう」
「坂部、如何する」
「一乗谷の朝倉遺跡は織田信長に城下が焼き払われて、その後は開発されずに埋もれて昭和になって発掘してほとんど当時のまま残ってるから見てみたい」
「坂部さんは詳しいですね。そうです昭和四十二年から発掘が始まりまして、まるでタイムカプセルみたいにその全貌が出て来ましたから是非ご覧下さい」
じゃあそうするか、と大場さんに案内を頼んだ。




