観光に出る2
そこへ社長と克之さんを会社に送り届けた大場さんが迎えに来た。大場さんの話だと社長から夕方までゆっくり観光案内してやれと言われた。
二人はキッチンに居る典子さんに珈琲カップを返すと大場さんと一緒に家を出た。シーマは玄関前の石畳に留まって、後部座席のドアを開けようとする大場さんを制止して勝手に乗り込んだ。大場さんもそのまま運転席に着くと車を出した。表の門柱でも来たときと同じように高村達が鉄柵の扉の開け閉めをしてまた乗り込み、大場さんはそのまま乗ったまま車は屋敷を出た。
「社長と克之さんを送り出すときはああしていないだろう」
と坂部が訊ねると、まあなあ、誰が見ているか解らないから一応は世間体もあるから、社長の時は大場さんが門と車のドアの開閉をやってるようだ。
「山手にある家ですから滅多に近所の人は通りませんが、屋敷の前を犬の散歩で通る人も居ますからね。社長と克之さんが勝手に車に乗る処を見られたら変な噂が立ちますよ」
「そんなもんか、矢っ張り田舎だなあ。都会じゃあわざわざ立ち止まってまで視る人はいないのに」
坂部はおかしな処で感心するなあと笑われてしまった。
シーマは屋敷を出ると直ぐに曲がりくねった林道を走り抜けて、幾つものカーブを曲がっても身体はどちらかに傾く事はなく真っ直ぐ座っていられた。まるでついこの前に自動車教習所で教えてくれた教官と変わらぬ滑らかさである。更にあの教習所より更にきついカーブをスムーズにシーマは通り過ぎていった。
大場さんは運転が上手いですね、と思わず声を掛けた。するとこの道は毎日じゃないが三十年以上走ってると言われた。特に祖父には福井市内までよく走らされた。
「それは何しにですか、うちの会社は福井には何もないでしょう」
「おじいさんは次男ですからあの家を出て福井で所帯を持ったんですよ。だから向こうには結構知り合いが多かったですよ」
「今でもですか」
「いやもう長男が亡くって会社を任されてからご無沙汰でしてね、でも息子さんの利忠さんが会社の切り盛りをすると、又おじいさんからこの道をよく走らされました」




