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特別な食事6

言われて隣の典子さんを見た。いつもの彼女は此処でなく向こうのキッチンのそばに待機していた。それが今日はみんなと一緒に食事をしている。それはそれだけみんな公平に食事をするべきだと裕介に言われてそうしたようだ。

「どうしてそう言い切れるんだ」

「だって典子さんは母になる事で人一倍苦労したのよ」

 と美紗和さんは坂部の耳元で、彼にだけ聞こえるように囁いた。

 典子さんはおばと一緒に引き取られてこの家で家族同然に育った。そして真っ先にこの家から嫁いで独立して所帯を持ったが、夫婦間に揉め事が出来て離婚した。その時に祖父は昔のおば同様にまた引き取った。

「それで離婚なんですか」

 此処を坂部が強調すると美紗和さんが、典子さんの恋のお相手は、と言いかけて今度は本人に止められてしまった。

「どうしてこの席でそんな話をするんですか」

「でも典子さんに男の子が生まれた時はおじいちゃんは遠縁でも安心したからよ、それは千里さんが生んだ最初の孫が女の子と知っておじいちゃんはがっかりしたのよ」

 と言いかけて「まだ私は若いんですから」と千里に言われて其れもそうねと話は頓挫した。此の辺りは矢張り高村に訊くしかないかと様子を窺っても、彼奴は久し振りの分厚いステーキと格闘していた。

 じゃあこちらから訊くしかないか。

「どうしてあなたの息子さんが美津枝さんの隣で畏まって食事をしているんだ」

 と典子さんに聞いても、いつも母に見てもらっていて特に気にしていない。とハッキリ言われるともう話を続けようがなかった。

「だって典子さんと千里さんは此の食事の支度に追われてそれどころじゃなかったからよ」

 と美紗和さんが代わって返答した。

「じゃあどうして千里さんの娘さんはちゃんと隣で食べているんだ」

「あの人には克之も義父母もいて面倒を見られているから、その余裕でああして親子一緒に食事が出来た。それに引き換え典子さんはおばさんが全て面倒見ているからよ」

 なるほどその違いか、しかしどうしてこの家では、そんな違いが生じているのか、そこがサッパリ解らなかった。


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