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特別な食事5

目の前のワインと睨めっこする坂部に、美紗和が寄りかかってきた。

「あなただってそうだけれど、でももうあと半年で二十歳なんでしょう。そんなウーロン茶ばかり飲んでいないでこのワイン美味しいわよ」

 とワイングラスを持ち上げて、美紗和は一口飲んだ。

「そうか初めてなら」

 呑もうとする坂部の前に別のグラスを置くと、彼女は「こっちの方が呑みやすいかしら」と水泡の在るワインを注いだ。

「その前に、その調査結果には俺の事をどんな風に報告してたんだ」

「それは頼んだ祖母以外は誰も知らないのよ」

「裕介もか」

「勿論、そんなことよりさあ飲んでみたら」

 ワイングラスを持つと贔屓ひいきにしてくれたらしい上座を見てみた。そこで隣の主人あるじの利忠氏と目が合って一瞬ドキッとした。

「お父さんも知らないのか」

「父は当家当主だから耳には入れてるでしょうね」

 そうかともう一度見ると向こうもグラスを持って頷いている。と謂うことは当主が今持ち上げたワイングラスで、祖母から聞いた情報は別に気にしていないようだ。これで酒への躊躇ためらいを打ち消した彼は一気に呑んで、静かにテーブルに置くと当主はもうこっちを見ていなかった。

「何だこれは、妙な味の炭酸水だなあ」

 と坂部は呑んだあとのグラスをしみじみと眺めた。

「あら知らないの、それはシャンパンよ、じゃあ結構非文化的な生活しているのね」

「オイそれは無いだろう。見たことはあるが呑んだ事がないだけだ。尤もまだ坂部は二十歳手前だからなあ」

 と学食より数倍もあるステーキと格闘していた高村が、その手を止めて姉に突っ掛かって来た。

「それより姉貴! だから我が家の状態を知ってもらうには彼のような苦労人が必要なんだ」

「でも、人間関係でもっと苦労した人が端に座っているけれど、どうしてみんなは無関心なの」

 と矛先を変えられた。


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