特別な食事4
坂部は一通り見回して、こんな晩餐会が毎日なら、とてもじゃあないが家計もそうだが、みんな緊張の連続で身が持ちそうもない。
「これは俺のための食事会なのか」と訊ねた。
「あたしは大げさすぎると言ってやった。いつものように時間になればお腹の空いた人だけ来れば良いのに、と言ったのにどうやら裕介がお昼の家族会議で、此の夕食時にみんなを集めたかったのよ」
最初はみんなは反対したけれど、離れのおばあちゃんにお伺いを立てた。その祖母のひと声で決まったようだ。
「でもその決めた人が真っ先にひと言も俺の事を聞かずに、行っちまったのはどう謂うわけなの」
「あなたを一目見て安心したからよ」
「あんな遠い処から見て一目で解る祖母は千里眼か」
「解るわけないでしょう。事前にあなたに関する情報を吹き込んでおかないと」
「そうだろうなあ、それで誰が吹き込んだ。俺を知っているのは高村だけだろう」
「あと二人居るでしょう、あの大学に」
「和久井と小石川か、でもあの二人は俺の事を何も知らないだろう、少なくと俺の実家の家族に比べたら」
「それがそうじゃないのよ。あなたの両親や家族には気が付かなかった事を知っていたわよ」
「それ、どういうこと」
「おばあちゃんが京都にある身辺調査事務所から届いた調査結果を拝見して、あとは照らし合わせるために本人を見ただけなの」
「照合するだけでこんな大層な夕食を催すのか」
「裕介のたっての頼みでもあるけれど、矢張り祖母のひと言でしょう」
坂部は美紗和さんの肩越しに裕介を見るが、彼は次々とテーブルの料理を平らげて、ワインまで飲んでいる。
「彼奴は未成年なのに酒はいいのか」
この宴会ではみんな和気藹々とやっているのに、そんなことは言ってられない。それでも何しろあまりお目にかかれない物ばかりなだけに矢張り抵抗感はある。




