特別な食事3
坂部が着席したのを合図に正面の祖母の横に裕介の父親の利忠が「ようこそいらっしゃいました」と言うなり、坂部のことは倅の裕介から伺っていますと慇懃に挨拶した。その後は正面の上座に一人座っている祖母を紹介して、次に隣の妻と長男夫婦、その横の子供椅子には夫婦の娘、隣には大場さんまで呼び出されたて座り、こちらの端に典子さんが座って居た。そこが一番食器や料理と飲み物の補充や入れ替えに必要な台所にもっとも近かった。
次に反対側に移り、はおばの美津枝さんを紹介して、何故かその次の子供椅子には三つの前後の男の子が神妙に畏まっていた。次に裕介、美紗和と座っていた。
主人の利忠から全員の紹介が済むと食事が始まった。洋食だが前菜からデザートまで全てテーブル中央に措かれて、各自食べ終わると勝手に次の料理を手元に寄せて食べていた。坂部にすればこんな前代未聞の食事に戸惑って喉がつかえた。そこで前に並んだ飲み物からウーロン茶らしき物をコップに入れて、それを飲んで食べ物を流し込んでいた。正面上座に居る祖母が途中から席を外した。それが合図のようにみんな雑談を始めた。坂部はこの状況が飲み込めずに隣の美紗和さんに訊ねた。それに依ると祖母は殆どこの食堂でなく、裕介が言ったように奥の離れで三食を摂っていた。
「じゃあ今日はどうしてなの」
「特別な日、例えばお盆とかお正月とか誰かの誕生日とか、今日みたいにひと月以上も逗留する人が来たときとか。まあおばちゃんもたまにはこうして顔を揃えたいから勝手に決めているのよ」
どうやら普段の食事は、みんながいつもの時間に此処へ来て、食事の準備や後片付けで、典子さんや千里さんが困らないように、遅れれば各自勝手に食べているようだ。
「エッ、そうなの」
と坂部は普段と今日の違いに驚いた。




