特別な食事2
「じゃあ奥の離れにもキッチンはあるのか」
元々は祖父の生前までは一緒に食事をしていたが、祖父が亡くなってから奥の離れを増築したときに台所とトイレと風呂まで作った。
何故そこまでするのか気になる。
「じゃあ離れは完全に独立しているのか」
「おじいさんが亡くなるとおやじがそうしたんや、まあおばちゃんも望んだようやさかいなあ」
どうも祖母の強い依頼らしい。
「それで美津枝さんはどうしてるんや」
「あの人も気楽なもんや、おばあちゃんと一緒にお茶をやっている」
「それで茶室があるんか」
「あそこで月に一回はおばあちゃんの主催で美津枝さんが補佐して月例で茶会を開いている」
「フーン、子供はどうしてるんや」
「町の保育園へ預けているがもう帰ってきて寝てるんやないか、千里さんと典子さんが交代で二人を一緒に面倒見てるさかい。おじいさんには一人見るのも二人見るのも一緒やってなったんやろうなあ、でも親権は別やと言われて祖父は難儀したそうや」
坂部の家とは別世界だ。特に下の子はあの狭い部屋を走り回ってギャアギャアと叫き散らす中で、机を食卓にして夜には寝室に早変わりさせてる俺の実家に比べれば到底考えられず、此処は夢のまた夢である。更にまるで旅館のように、夕食の時間だと裕介に言われて、たちまち現実の夢の世界に戻されてしまった。
「坂部を此処へ招いたのは祖父が抱く生前の妄想からこの家を変えるためなんだ。もう少ししっかりとこの世界に浸ってもらわんと困るが取り敢えず空腹を満たしてから考えよう」
「ああ、そうするか。俺も今日は今まで育った中では一番真面でない現実の連続で少々疲れたからなあ」
二人は食堂へ足を運んだ。食堂は十畳程だが食器棚も何もなく、ただ奥行きだけが有るから広く、中央には料理が盛られた大きなテーブルがあった。テーブルの両側にある五つずつの椅子にみんな座っている。




