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何が問題なのか1

 店に入り本題の頃には、出されたマスター自慢の特別仕立ての珈琲は少し冷めかけていた。これでは最初のひと口は何だったのかと、熱いうちにもっと味わって飲め。美紗和のひと言で、高村はやっと鼻腔を突いて脳天を刺激するここ独特の珈琲を味わった。

 一人のうのうと大学で遊んでいると思われたくない高村は、おじいさんの過去をまず知らねばと訊ねた。

「それで大場さんとはここへ来ると祖父はどんな話をするんですか」

 とマスターに訊きながら俺は一人で浮かれていないと美紗和を睨みつけた。逆に却ってそれがどうかしたのって顔をされた。此の姉弟はどうなってるんだと坂部は傍観している。

「そうだねえ、あれは冬だったかねえ随分と雪が降っていた。珍しく一回り以上も歳の離れた女性と一緒で。ふとカウンターから表の駐車所を見てもシーマがなかった。その代わりに空車に切り替えて走り去るタクシーと、目の前の二人を見比べて珈琲を出したんですよ」

「その人は誰ですか」

「美津枝さんとか言ってましたね」

「いつですか」

 どうやら祖父は亡くなる前の冬に、二人だけでしかもタクシーでこの店へやって来た。祖父と美津枝さんはカウンターから一番遠いテーブル席で、ボソボソと話していた。マスターは珈琲のお代わりを持って行くと、相手の女性の名前を小耳に挟んだだけで、あとは聞こえなかった。

「じゃあどんな風に話していたんですか、此処からでも判るでしょう」

「それが屈み込んでひそひそ話されているので、それでも旦那さんはいたって明るかったですよ」

 カウンター席から祖父が座ったであろう一番遠い席を高村は一見した。此処から屈み込んで話せば、一方の美津枝おばさんの表情は見えないだろうなあ。

「どんな風に聞いてました」

 後ろ姿だからおばは神妙だったのか、それとも陽気だったのか、どうもどっちとも取れる微妙な身体の動きだった。時に双方とも感情の高ぶりが見て取れるような動きを交互にしていたそうだ。



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